加齢による意思決定過程の変容に影響を及ぼす心理的・環境的要因の解明
【研究キーワード】
ストレス / アイオワ・ギャンブリング課題 / 不安感 / 皮膚電気活動 / 利他的配分 / 推論能力 / 給付金配分 / 損失 / 意思決定 / 時間的切迫 / 自律神経反応 / 独裁者ゲーム / 意思決定過程 / 加齢 / 曖昧さ / 利他性
【研究成果の概要】
本研究は先の我々の挑戦的研究(萌芽:17K18696)の発展的課題として、実験心理学と実験経済学の融合的アプローチにより、加齢による意思決定過程の変容を心理的・環境的要因の相互作用の観点から解明することを目的としている。
【心理学グループ】
これまで、若者群を対象に、時間的切迫と情報あいまい性が高い状況におけるリスク回避に関わる意思決定過程に関して、行動実験ならびに生理心理実験を行い、危急条件下では中リスク選択が喚起されることを報告してきた。本研究では対象群を高齢者にも広げ、かつ、意思決定過程に関わる自律系生理反応の個人モデル化を進めている。コロナ禍の状況において対面での新たな実験が困難であるため、ギャンブル課題の二次データを用いた若者群の生理反応モデルの作成を進めた。4つのモデルパラメータのうち、生理反応の収束時間パラメータが不安状態スコアならびにリスク選択パターンの個人間変動と関連しており、生理反応を用いて選択パターンを直接、説明可能であることが示された。
【実験経済学グループ】
先進国における所得格差の問題は、近年、災害等の経済損失により深刻化している。コロナ禍では、損失を補うため、給付金の支給などによる財の再分配が行われたが、元々の所得格差と災害等での損失によって生じた格差の両方が存在する場合、人々はどのような再分配を望むのだろうか。本研究では、この問題を請求権付き交渉問題として捉え、どのような配分指標が当事者によって選択されやすいかを独裁者ゲームの実験を通して分析した。実験の結果、元々の所得差を是正する配分よりも、損失によってもたらされた格差を是正する配分がより好まれることが明らかになった。また、前年度に実施した独裁者ゲームの実験において、戦略表明法のほうが逐次選択法よりも他者への配分が大きい傾向がみられた。これに対して、立場の不確実性に着目した新たな仮説を立てている。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
曽雌 崇弘 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター | 精神保健研究所 地域・司法精神医療研究部 | 室長 | (Kakenデータベース) |
福田 恵美子 | 東京工業大学 | 工学院 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
竹内 あい | 立命館大学 | 経済学部 | 准教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)