江戸川乱歩と大衆の20世紀をめぐる総合的研究
【研究分野】日本文学
【研究キーワード】
大衆文化 / サブカルチャー / 都市化 / 通俗文学 / ミステリー / 大東京 / 震災復興 / モダニズム / 都市
【研究成果の概要】
従来の読み物的評論主導による固定化された乱歩像の氾濫に対して本研究では根本的な異議を唱え、厳密な研究的態度の確立を目指して、この三年間共同で研究を続けてきた。従来、通俗ものと貶められてきた昭和初年代の長編小説群を再評価し、それらと昭和戦前期の社会・世相・読者との関わりを探り、その意義・価値を再評価した。また戦中期・戦後期の少年ものに関しても、時代の激変との関係、乱歩の作家的生涯上への位置づけ、公教育やマスコミ・ジャーナリズムとの関係を考察し、従来のマニアックな少年ものへのアプローチを排した。また大衆社会や大衆と乱歩作品との濃厚な関係への考察も、本研究で力を注いだことのひとつである。従来の乱歩評論がとかく思いつきの列挙になりがちであったのに対して、本研究では厳密な研究的アプローチをめざした。それによって、研究の蓄積と前進とが図られると考えたからである。
当初、本研究は、立教大学が引き受けることになった乱歩資料・旧蔵書とどのように関わっていくべきか、というところに端を発し、2004年の乱歩展、国文学解釈と鑑賞の別冊特集号の刊行を最初の成果として、その後は各メンバーが個々に独自の関心に基づき研究を持続してきた。それらの一部は同時提出の報告書に見られるとおりである。さて今後の展望だが、2006年6月に立教大学に乱歩蔵書・資料の公開と保存と研究を核とする大衆文化研究センターが設立された。共同研究のほうは2006年度で研究期間が終わったが、今後もセンターとの密接な連携の下で、さらに本研究の方向性はいっそう拡大・発展させていく必要がある。
【研究代表者】