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大阪大学 研究Discovery Saga
2025年3月24日

タンパク質「HSC70」による細胞ストレス応答の 新たなメカニズムを解明

【産学連携対象 全学共通分野 Discovery Saga】
工学農学医歯薬学
【持続可能な開発目標(SDGs)】
【Sagaキーワード】
持続可能/紫外線/持続可能な開発/協調制御/キチン/シャペロン/免疫沈降/オミクス/オミクス解析/ホメオスタシス/ユビキチン・プロテアソーム系/心臓/ストレス応答/タンパク質分解/プロテアソーム/プロテオミクス/マウス/ユビキチン/ユビキチン化/細胞周期/低分子化合物/培養細胞/分子シャペロン/ストレス/難病
2025-3-18●生命科学・医学系医学系研究科教授坂田泰史

発表のポイント

  • 分子シャペロンであるタンパク質「HSC70」が別のタンパク質「SCFユビキチンリガーゼ」の活性を制御していることを解明
  • SCFユビキチンリガーゼは不要なタンパク質を見つけて分解するよう指示する役割を担っているが、それが細胞内でどのように協調制御されているかは不明だった
  • 細胞がどのように外部環境の変化に適応し、ストレスに応答するかについての重要な知見
  • がんや心疾患など、細胞のストレス応答異常が関与する疾患の新たな治療戦略開発への寄与に期待
  • 発表概要

    大阪大学大学院医学系研究科の西村俊亮さん(博士後期課程)、木岡秀隆助教、坂田泰史教授(循環器内科学)らの研究グループは、英国クリック研究所との共同研究において、タンパク質HSC70がSCFユビキチンリガーゼというタンパク質をどのように調整しているかについて、世界で初めて明らかにしました。
    細胞内では、タンパク質が作られたり分解されたりしてバランスが保たれています。このバランスを保つために重要な役割を果たすのがSCFユビキチンリガーゼです。このタンパク質は、不要なタンパク質を見つけて分解するよう指示しますが、細胞内での働き方については不明な点が多く残されていました。
    本研究では、HSC70と呼ばれる分子シャペロンがSCFユビキチンリガーゼの働きを調整していることを明らかにしました。通常、HSC70はCOP9シグナロソームという別のタンパク質の働きを助けることで、SCFユビキチンリガーゼの活性を抑制しています。しかし、UV(紫外線)照射などの外的ストレスを受けると、HSC70はCOP9シグナロソームから離れ、SCFユビキチンリガーゼに直接結合することでその働きを活発にします。これにより、迅速なストレス応答が可能になります。
    本研究成果により、がんや心疾患など、ストレス応答の異常が関与する疾患の新たな治療戦略の開発への貢献が期待されます。
    本研究成果は、英国科学誌「EMBO reports」(オンライン)に、2月6日(木)に公開されました。

    図:HSC70は、細胞ストレスの有無に応じて、結合タンパク質をCOP9シグナロソームから活性型SCFに乗り換えることで、迅速な細胞ストレス応答を可能としている。

    研究の背景

    私たちの体内では、日々多くのタンパク質が合成され、それらが適切に分解されることで細胞の恒常性(ホメオスタシス)が維持されています。このバランスを調整する重要な仕組みの一つが、ユビキチン・プロテアソーム系と呼ばれるタンパク質分解システムです。その中でもSCFユビキチンリガーゼは細胞周期に関連した多くのタンパク質を分解することで知られています。
    SCFユビキチンリガーゼはNEDD8化と呼ばれる翻訳語修飾によって活性化し、標的タンパク質を分解します。分解後新たな標的タンパク質を分解するためには、COP9シグナロソームによる脱NEDD8化を受け、一度不活化される必要があります。特に紫外線(UV)等のDNAダメージといった外的ストレスを受けた際には、迅速に標的タンパク質を分解する必要があるため、活性化と不活化のサイクルを効率よく回す必要がありますが、細胞内でこれらがいかに協調して制御されているかはまだ十分に解明されていませんでした。

    研究の内容

    今回研究グループでは、HSC70と呼ばれる分子シャペロンがSCFユビキチンリガーゼの活性を動的に制御することを明らかにしました。
    具体的には、マウスの心臓組織やヒト培養細胞を用いて、免疫沈降実験とプロテオミクス解析を行い、HSC70の新規結合タンパクとして、SCFユビキチンリガーゼとCOP9シグナロソームを同定しました。HSC70は非ストレス下ではCOP9シグナロソームと結合し、脱NEDD8化活性を増強することで、SCFユビキチンリガーゼの活性を抑制していますが、UV照射などの外的ストレスを受けると、HSC70はCOP9シグナロソームから解離し、NEDD8化修飾を受けた活性化型SCFユビキチンリガーゼと相互作用し、そのユビキチン化活性を増強させることを見出しました。この結合分子の切り替えにより、SCFユビキチンリガーゼの活性化サイクルが促進され、基質分解を速やかに行うことで細胞の迅速なストレス応答が可能になることが明らかとなりました。

    本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

    本研究成果により、細胞がどのように外部環境の変化に適応し、ストレスに応答するかについての理解が深まりました。この知見は、細胞のストレス応答異常が関与するがんや心疾患について、新たな治療戦略の開発に寄与する可能性があります。例えば、HSC70の機能を活性化する低分子化合物の探索により、SCFユビキチンリガーゼによって分解されるがんや心疾患に関連したタンパク質の分解促進など、将来的な疾患治療への応用が期待されます。

    特記事項

    本研究成果は、2025年2月6日(木)に英国科学誌「EMBO reports」(オンライン)に掲載されました。
    タイトル:“HSC70 coordinates COP9 signalosome and SCF ubiquitin ligase activity to enable a prompt stress response”
    著者名: Nishimura S, Kioka H, Ding S, Hakui H, Shinomiya H, Tanabe K, Hitsumoto T, Matsuoka K, Kato H, Tsukamoto O, Asano Y, Takashima S, Enchve R, and Sakata Y
    DOI:https://doi.org/10.1038/s44319-025-00376-x
    なお、本研究は、文部科学省 科学研究費補助金 基盤研究(C)、日本医療研究開発機構(AMED)、 JST創発的研究事業、日本心臓病財団、武田科学振興財団、先進医薬振興財団、大阪難病研究財団の一環として行われました。

    参考URL

    木岡 秀隆助教 研究者総覧
    https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/acf4e7ed12215631.html

    SDGsの目標