儒教文化で捉える「孝」の表現と終末期医療倫理の再構築ー日本と台湾の比較を中心にー
【研究キーワード】
終末期 / 延命治療 / ACP / 尊厳 / 台湾 / 親孝行 / 善終 / 意思決定 / 家族 / 儒教 / 自己決定
【研究成果の概要】
本研究は、終末期医療における「孝」(日本の場合は「親孝行」)の表現に注目し、延命治療をめぐる意思決定と家族の葛藤を分析することで、患者の「最善な利益」や「自律の尊重」など従来の倫理原則とは異なる「孝」の観点から捉える終末期医療のあり方と家族との関係性に基づいた倫理原則の提示を目的とする。日本と台湾を中心に、それぞれの社会における「孝」の概念と医療決定に際する「孝」の役割を考察し、「孝」の文化がいかに終末期医療方針に影響を与えてきたのかを検討する。
2021年度は、終末期医療における「孝」の表現について、国会議事録で関連の証言を抽出し、道徳心理学の観点からその倫理性を分析した。親子関係の変化に伴って、「孝」の実践の特徴はパターナリスティック型から自律尊重型へと変わりつつある。終末期医療の法制化によって延命治療をめぐる事前の話し合いが推奨されているいま、親の意思を聞き出すことも「孝」の表現としてみなされる空気が醸成されつつある。こうした「孝」の内実の変化を「二重孝行モデル」で分析し、医療現場での「孝」の役割を明らかにした。
また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴って生じた医療資源や終末期の医療現場への影響についても調査し、日本と台湾のトリアージ制度の違いと問題点を明らかにし、感染症対策で顕在化した医療制度の問題、感染者に対する差別やバッシング、行動制限措置によって終末期の意思決定の確認が困難になった実態を明らかにした。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2018-04-01 - 2023-03-31
【配分額】2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)