企業・投資家の情報取得と学習過程に関する研究
【研究キーワード】
予測 / 業績予想 / 企業行動 / 設備投資 / 情報効率性 / 情報取得 / 株式市場 / 投資家 / 学習 / 情報 / 学習過程
【研究成果の概要】
2021年度は①企業の業績予想に関する実証研究、②企業の情報取得と設備投資に関する理論分析を行った。
①日本企業は売上高や利益の予想を投資家に向けて公開しており、この情報を利用して投資家は企業の将来の状態について学習し、株式の売買行動を行うと考えられる。しかし、公開される業績予想が「真」の経営者の予想であるとは限らない。例えば、個別企業の事前の予測値と事後的な実績値が外れている状況を考えると、企業が事前に形成した予測値をそのまま公表し、結果として実績値が予測値から外れた場合が考えられる一方で、企業が事前には実績値に近い予想を持っているにも関わらずそれから外れた値を公表し、結果として実績値が予測値から外れる場合も考えられる。私は東京証券取引所上場企業の業績予想のデータを利用して売上高や経常利益の期待成長率を計算し、そのヒストグラムの期待成長率がゼロの点を境界として不連続性が存在し、ゼロよりも大きい領域に期待成長率が集積していることを確かめた。この不連続性は、前年度の売上や利益を達成できないと予想しているにも関わらず、前年度の実績を上回るように予測を公開している企業が存在していることを意味している。この結果は推定された密度関数の不連続性を確かめるマニピュレーションテストを使用して検定によって、複数の多項式の定式化に対して頑健な結果であることが確認された。
②経営者の学習と設備投資に関するモデルを作成した。このモデルにおいて、企業(経営者)はコストを支払って情報を取得し、生産性の予測をおこなって、投資の計画を立てる。予想しない生産性ショックが生じたとき、この計画とは異なる設備投資を行うことができるが、計画から乖離するとコストが生じるようになっている。このモデルでは高い生産性の企業がより情報取得を行うインセンティブを持っていて、資本の配分に対して影響を持ちうることを示した。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)