地域精神医療における認知症と「自己参加型医療」:医療人類学的分析
【研究キーワード】
医療人類学 / 精神医学 / 日本 / 認知症 / うつ病 / 当事者 / 老い / 新健康主義 / 地域精神医療 / 自己のケア / 監視 / 共感 / 自己参加型医療 / スティグマ / 医療化
【研究成果の概要】
本研究は、当初認知症に中心とした地域精神医療の発展の歴史と現在の臨床的実践について、人類学的な参与観察を含めたフィールドワークを主体としての調査を目指すものであった。しかしコロナ禍において、特に感染のリスクが高い認知症の当事者や医療従事者へ直接コンタクトをとることは控えざるを得ず、かわりに認知症をはじめとしたより広義での精神障害に対する意識の高まりを「新健康主義」と名付け、発達障害、うつ病、認知症と人生の節目節目で心と脳の健康について人々が自らを振り返るライフサイクルの精神医療化に関するプロジェクトへとシフトした。このような視点から前年は特に老いにおける新健康主義を支えるテクノロジーであるデータ医療と、それに対するさらなる自省性と抵抗の拠点ともなり得る当事者運動に着目して、文献とインタビュー調査から論文をまとめた。今年度はこの新たな動きに関して、あらためて地域医療の視点から見たときに、そのような健康への振り返りにどのように社会的な視点が可能なのかについて考えた。その際に何をもって「社会」と捉え、病の原因に関する社会的想像力が健康へ振り返りをどう変化させるのかについて、国際比較の視点から調査を行った。その成果が医療において世界でもっとも権威のあるジャーナルであるLancet誌に掲載されるなど、国際発信を充実させた年だった。この研究の成果を精神医学疫学の国際比較の本にも発表し、日本における老いと認知症、データ医療についての考察を深めることができた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)