都市化により減少する自然環境と住民への健康影響について
【研究分野】公衆衛生学・健康科学
【研究キーワード】
健康指標 / 都市医学 / 自然環境 / リモートセンシング / 地理情報システム / コホート研究 / 都市生態系
【研究成果の概要】
「都市生態系」は、自然環境要素、人為的環境要素、都市内・都市間の動的相互関係の上に成り立つ。人為的環境の拡大と自然環境要素の減少を伴う都市生態系の変化は、都市に生活する人間の健康に多様なインパクトを与える。本研究は、「都市の自然環境」の身体的・精神的影響、その容量と人間の健康の量的関係を分析し、都市生態系の中での自然環境と人間の健康との関係を評価することを目的とした。
1.自然環境の減少と健康水準の変化に関する量的指標に基づく研究を行い以下の結果を得た。東京都北東部の476の小地域を単位に、約3000の人口、社会経済、環境、健康指標のデータベースを構築し、地域健康ニーズを定量化・視覚化するGISプログラムを開発した。上海市松江区にGISによる環境健康評価システムを適用し、自然環境、社会経済的環境、健康水準の地理的分布の相違と指標間の関連性を明らかにした。フエ市の船上居住者の世帯調査により、居住環境条件と感染症等の傷病率との関連を明らかにした。パラオ共和国の首都移転に伴う生態系の変化と健康影響を評価するサーベイランスシステムを構築した。
2.自然環境容量とアクセス度の変動と健康変化に関する研究を行い以下の結果を得た。3144人の都市居住高齢者を5年間追跡調査し、近隣の緑地の減少に伴い死亡率が上昇することを明らかにした。都市化に伴って減少する就学前の子どもの外遊びの量と健康の相対的低下との関係を示した。都市生活のストレス下にある働き盛りの男性において、健康重視の態度ならびに健康情報を積極的に活用することが、健康生活習慣の改善を実行することと関係することを示した。
以上より、都市生態系の中で「自然環境」と人間の健康との関係を評価する研究のフレームワークを示し、都市における自然環境の減少が、都市生活者のサブグループの生活条件に依存して多様な健康影響を与える様相を明らかにした。
【研究代表者】