放射線治療による放射線障害発現を予測するための照射前スクリーニング法の開発
【研究分野】放射線科学
【研究キーワード】
放射線治療 / 染色体異常 / 全身照射 / 晩期放射線障害 / 放射線照射 / 細胞周期 / アポトーシス / 遺伝子突然変異
【研究成果の概要】
【はじめに】平成11年度はボランティアおよび患者さんより採取した真皮細胞を用いて、in vitroでの放射線照射後の細胞生存率測定、細胞周期の測定、アポトーシス発生頻度の測定を行った。しかしながらPEのばらつきが大きく同一のヒトから得た真皮細胞でも実験毎にPEが異なり、生存率曲線が一定の傾向を示さなかった。またアポトーシスに関しても、アポトーシス発現頻度のばらつきが大きく一定した傾向が得られなかった。ヒト真皮細胞は成長速度も遅く非常に扱いにくい細胞であった。これらの知見から実験系を見直し、平成12年度は、X線照射後にヒトリンパ球に発生する染色体異常の、in vitro、in vivoでの定量を試みた。この手法をもちいて、放射線二次発癌など、晩期放射線合併症の発生を予測、評価できると考える。【方法】全身照射(TBI)は、2Gyの照射を、1日2回、3日間施行する。照射前および2Gyの照射毎に採血を行いPHAを添加培養した。またTBI前に採血した血液を1mlずつ7本のカルチャーフラスコに分け、TBIのスケジュールにあわせて実験用X線照射装置で2Gyずつ照射し、PHAを添加培養した。さらにコルセミドを添加培養し低張処理を行った。カルノア液で固定しスライドグラスに展開May-Gruenwald Giemsa染色を行ったのち鏡検した。【結果】照射線量と染色体異常頻度の関係を検討したが、照射線量の増大に伴いdicentricおよびfragmentの発生頻度は、TBIとin vitroでほぼ同様の増加傾向を示していた。【まとめ】TBIとin vitroでのリンパ球の照射線量と染色体異常発現のDose-response curveはほぼ同様の傾向がみられた。このことから、in vitroの実験は、生体内リンパ球被曝の影響を忠実に再現できると考えられた。広島・長崎のデータでは、放射線被曝と白血病の発生に、相関が認められており、この手法を用いて、放射線被曝と発ガンとの関係を検討していく上で理想的なモデルとなる可能性がある。
【研究代表者】