超新星起源の高エネルギー電子成分の研究
【研究分野】素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理
【研究キーワード】
電子 / 宇宙線 / 超新星 / 加速機構 / シンチファイバー / 気球 / イメージング / 高エネルギー / 加速 / 陽電子
【研究成果の概要】
我々がこの研究費で開発を行なったシンチファイバー(SciFi)を用いた電子観測装置(BETS:Balloon Borne Electron Telescope with Scintillating Fibers)は、ほぼ期待どおりの性能を達成しており、気球実験により10GeV-100GeVの電子エネルギースペクトルの観測に成功している。そして、拡散モデルにもとずく計算結果との比較により、超新星起源の電子の加速と伝播に関する知見を得ている。この装置は、従来の装置では困難なTeV領域での観測を数年間にわたって行なう能力を持っており、今後はスペースでの観測を目指している。各年度毎の研究成果は以下に示すとおりである。
平成5年度:BETSの基本設計および試作、テストフライト
装置の基礎設計を行うために各種のシミュレーション計算を実施し、同時にSciFiの基本性能テストを行なった。その結果、28cm×28cmの有効面積を持つ装置を製作する方針をきめた。さらに、原子核乾板を併用して、SciFiの位置検出性能と荷電分離性能、および高エネルギー電子の識別の確認を行うことにした。気球搭載用の回路システム、テレメトリーシステムを製作し、9月に気球によるテストフライトを行なった。
平成6年度:装置改良および第2回フライト
前回のテストフライトの結果をもとに、I.Iの性能増強、テレメトリーの機能強化、重イオン用トリガーモードの追加等装置の改良を行ない、2回目のフライトを行なった。この観測では、シャワー現象を約10万例が観測され、LEDを用いたSciFiの位置較正による画像解析の方法を確立した。
平成7年度:BETS-2の製作の第3回フライト
シンチファイバーの数をこれまでの2倍(約10,000本)にしてx、y方向を各々独立に二台のI.Iで読みだすための装置増強を行なった。このBETS-2を用いて気球観測を行ない、36km以上の高度で約7.5時間分のシャワーデータを得た。機上でのトリガーと画像解析により、陽子雑音は1/2000以下になっていることが確認され、原子核乾板の解析との比較でも50GeV以上の電子についてはほぼ完全な対応が得られた。
平成8年度:加速器テスト
9月にCERN-SPSのの電子ビームをもちいて装置の較正実験を行なった。この結果、観測データのエネルギー較正と電子選別の確認がおこなわれ、エネルギースペクトルが得られている。
【研究代表者】