スペシャルポピュレーションの抗がん剤感受性:血中胆汁酸上昇の影響とメカニズム解析
【研究キーワード】
がん / 胆汁酸 / 薬剤反応性 / スペシャル・ポピュレーション
【研究成果の概要】
特別な背景を有するスペシャル・ポピュレーションは、一般に新薬開発時の臨床試験対象とはほとんどならないため、実臨床での化学療法実施に際しては臨床症状や治療方針、リスク・ベネフィットを考慮した適切な用量調節が必要である。
我々は、遺伝子の転写発現調節を司る生理活性物質として注目されている胆汁酸に着目し、胆汁うっ滞型肝障害や肝外胆管の閉塞等に伴い血中で上昇する範囲の低濃度胆汁酸成分(ケノデオキシコール酸:CDCA)がヒト乳がん細胞株MCF-7のドキソルビシン(DXR)感受性を低下させることを見出している。本研究ではその影響と機序について明らかにし、血中胆汁酸濃度上昇を呈する患者のがん特性や使用抗がん剤を考慮した治療を目指す。
2021年度は、2020年度からのMCF-7を用いた胆汁酸のがん細胞増殖及び薬剤感受性に影響するメカニズム研究を継続し、幾つかの興味ある知見を得た。胆汁酸受容体TGR5遺伝子発現量はアゴニストであるCDCAにより上昇したが、CDCA単独曝露よりもDXR曝露後のCDCA曝露によりさらに上昇した。その下流のCREB遺伝子発現量には著変なかったが細胞周期調節に関与するCDK6やp21遺伝子発現量はDXR曝露後CDCA曝露により顕著に上昇し、CyclinD1遺伝子発現量はわずかに上昇した。胆汁酸核内受容体FXR遺伝子発現量もCDCA曝露により上昇したがDXR曝露後のCDCA曝露ではさらに上昇した。NF-κB2遺伝子発現量はCDCA単独曝露時には変化せずDXR曝露後のCDCA曝露により上昇した。Akt及びBcl-2遺伝子発現量は著変なかった。
胆汁うっ滞・担がんモデル動物を用いたDXR治療反応性への胆汁酸の影響検討に向けた予備検討を行い、胆管結紮マウス及びCDCA腹腔内投与マウスの2種類を作製し、経時的採血により各種血中胆汁酸濃度を測定し、モデルの適切性を確認した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
中村 智徳 | 慶應義塾大学 | 薬学部(芝共立) | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)