発生期脳内で神経細胞が局在化する分子機構
【研究分野】神経化学・神経薬理学
【研究キーワード】
大脳皮質 / 興奮性神経細胞 / 層形成 / 抑制性神経細胞 / 再凝集培養 / 脳室帯 / リーリン / リーラー / 神経細胞移動 / スライス培養 / インサイド・アウト / 大脳皮質構築 / 細胞凝集 / 細胞接着
【研究成果の概要】
発生期の大脳皮質において、興奮性神経細胞は脳室帯で誕生し、中間帯を通過して辺縁帯直下まで移動して、最終的に配置される。この移動過程の繰り返しにより、早生まれの細胞は最終的に皮質板深層に、遅生まれの細胞は浅層に配置され、全体として6層からなる皮質板が構築される。本研究では、まず、マウス大脳皮質脳室帯及び中間帯の細胞を用いた分散再凝集培養系により、早生まれの細胞と遅生まれの細胞が互いに選別されることを見いだした。さらに、胎生16日のマウス大脳皮質脳室帯及び中間帯の細胞を各発生時期においてラベルし、各時期に誕生した神経細胞間の関係を、分散・再凝集培養系により検討した。その結果、培養開始時に既に中間帯に出ている胎生14日生まれの神経細胞(将来のIV層)は、最終的に凝集塊の中心近くに配置し、培養開始時に脳室帯に局在していた15.5日生まれの細胞(将来のII/III層)は、周辺近くに分散した。一方、胎生14.5日の大脳皮質神経細胞を、胎生13日または14日にラベルして同様に培養したところ、胎生14日生まれの細胞は、培養開始時にはまだ脳室帯に局在していたにもかかわらず、最終的に凝集塊の中心近くに配置し、一方、13日生まれの細胞(将来V/VI層を構成)は、培養開始時に既に中間帯に出ているにも関わらず、凝集塊の周辺近くに配置されることを見いだした。すなわち、凝集塊内での配置は、培養時点で細胞が局在する部位の相違を反映したものではなく、細胞の誕生時期に依存していることが示唆された。また、以上の誕生時期依存的細胞選別の仕組みは、リーリンに非依存的に獲得されることを見いだした。次に、腹側終脳に由来し、脳表面に平行に皮質に進入する抑制性神経細胞の誕生時期依存的配置を、興奮性細胞のそれと比較する解析を行った。その結果、両者とも全般的には"inside-out"で配置するものの、早生まれの抑制性細胞は浅層と深層の2相性に配置する等、相違があることを見いだした。
【研究代表者】