β型トランスフォーミング増殖因子レセプターの作用の研究と臨床応用
【研究分野】病体医化学
【研究キーワード】
TGF-β / レセプター / 癌抑制遺伝子 / シグナル伝達 / 増殖抑制 / Smad / セリン・スレオニンキナーゼ / アポトーシス / セリン-スレオニン・キナーゼ / アクチビン / 免疫抑制剤 / cDNAクローニング / セリン-スレオニンキナーゼ
【研究成果の概要】
β型トランスフォーミング増殖因子(TGF-β)は細胞の増殖を抑制するほか多彩な作用をもった生理活性物質である。TGF-βは二種類のセリン-スレオニンキナーゼ型レセプター(I型、II型)によってシグナルを伝達し、細胞内ではSmadという蛋白質を介してシグナルを伝達する。本研究では以下のプロジェクトについて研究を行った。
1)TGF-βI、II型レセプターの種々の疾患における発現:網膜芽細胞腫や扁平上皮癌、前立腺癌などを中心にレセプターの発現と変異の有無を検討した。網膜芽細胞腫の培養細胞株ではII型レセプターの発現を認めないが、分化にともない発現が見られた。II型レセプターのプロモーター領域には変異は見られなかった。またI型レセプターにも異常があることが示唆されたが、Smadには異常は見られなかった。前立腺癌でもI、II型レセプターの発現の低下を認めた。
2)TGF-βレセプターの細胞内基質の同定とcDNAクローニング:酵母を用いたtwohybrid法により、ショウジョウバエのI型レセプターThick veinsの基質となるペプチドしてDIAP1(Drosophila inhibitor of apoptosis-1)をクローニングした。
3)シグナル伝達分子Smadの作用と疾患における異常の検討:TGF-βレセプターのシグナル伝達分子Smad2の異常を同定するため、遺伝子構造の決定を行った。さらにSmad2にはエクソン3が転写されないタイプのものが存在することを明かにした。エクソン3のないSmad2はこれをもつものよりも活性が高い可能性が示唆された。
【研究代表者】