サイクリンA発現調節に基づく血管平滑筋アポトーシス誘導法の開発
【研究分野】循環器内科学
【研究キーワード】
セル・サイクル / 血管平滑筋細胞 / アポトーシス / サイクリン / 転写因子 / 抗酸化剤 / 遺伝子導入 / 動脈硬化
【研究成果の概要】
1)抗酸化剤による血管平滑筋細胞におけるアポトーシス誘導において、培養細胞の細胞密度が重要であり、細胞密度が高い時はアポトーシス誘導が困難となることを発見し、その機序として、セル・サイクルの停止が関与していることを見いだした(1998年日本循環器学会)。抗酸化剤が高密度の血管平滑筋細胞の増殖を抑制する機序について引き続き検討を重ねた結果、サイクリン依存性キナーゼのインヒビターであるp21/waf1/cip1の発現が増大していることをmRNAレベルで確認した。現在、その発現の機序を転写レベルで検討中である(投稿中)。
2)この興味ある所見にもとづき、食品中の抗酸化物質としてRed Wine Polyphenol(RW-PF)に着目し、RW-PFが血管平滑筋細胞の増殖におよぼす影響を検討した(Suntory基礎研究所との共同研究)。その結果、RW-PFは細胞密度に関わらず、血管平滑筋細胞増殖を抑制し、アポトーシスは惹起しなかった。その細胞増殖抑制作用の機序を解明するためセル・サイクル制御因子であるサイクリンAの発現を検討したところ、その遺伝子発現が、RW-PFによって転写レベルで抑制されていることが判明した(Circulation,in print)。この研究は、食品中抗酸化物質の抗動脈硬化作用のメカニズムの一部を解明するものとして重要である。
3)アポトーシス関連の核内レセプターの意義を検討する過程で、別の核内レセプターであるperoxisome proliferator-activated receptor gamma(PPARγ)が 血管平滑筋細胞に存在し、何らかの生物活性を保持していることを確認し、報告した(Biochem Biophys Res Commun.247:353-356,1998)。
【研究代表者】