改変シグナル分子によるサイトカイン機能の制御
【研究分野】広領域
【研究キーワード】
サイトカイン / シグナル伝達 / 造血因子 / RAS / STAT / 細胞増殖 / 細胞分化 / 細胞死 / 造血 / JAK / レトロウイルス / アポトーシス / サイトカイン受容体 / JAKキナーゼ / 転写因子 / 分化
【研究成果の概要】
本研究では、IL-3/GM-CSFにより活性化される主要なシグナル経路であるRasとSTAT5の機能解析を行うとともに、それらの変異分子の作成と発現によるシグナル経路の制御法の開発を目指した。
サイトカインによる造血細胞の細胞死の抑制にRASの活性化が重要である。そこで、部分活性型RAS変異体を用いて細胞死抑制のシグナル解析を行った。その結果、RASはRAF/MAPキナーゼ経路とP13キナーゼ経路の両方を使って細胞死を抑制していることを明かにした。また、サイトカイン除去により誘導される細胞死においても、FASなどによる誘導的な細胞死と同様にCaspase-3が活性化されること、さらに、それがサイトカイン除去に伴う細胞死に重要であることを示した。しかし、RASによる細胞死の抑制とCaspaseの活性との関連は現在検討中である。
IL-3/GM-CSFなどの造血因子がSTAT5を活性化することを見出していたが、そのサイトカイン機能における役割は不明であった。そこで、STAT5の標的遺伝子のクローニングを行い、SH2ドメインのみをもつ新規分子CIS,IL-6ファミリーのサイトカインOncostatinM(OSM)などを得た。CISはSTAT5により誘導される分子でSH2ドメインによりチロシンリン酸化された受容体などに結合してサイトカインのシグナルを抑制する負の調節分子であることを証明した。また、OSMの発現および機能の解析から、OSMは血液幹細胞が発生するaorta/gonad/mesonephros(AGM)領域での発現が認められること、AGM由来の細胞の培養系にOSMを添加することで血液の産生が著しく増加することを見い出した。さらに、この培養系では血管内皮細胞の増殖もOSMにより促進されることなどから、OSMは血管内皮と血球の共通の前駆細胞であるhemangioblastに作用する可能性が示唆された。
優勢抑制型のSTAT5変異体を作成して、STAT5の機能を検討した。IL-3依存的に増殖するBaF3細胞に優勢抑制型STAT5を発現すると、IL-3依存的な細胞増殖が有為に抑制された。この結果はSTAT5で制御されている遺伝子が細胞増殖に関与していることを示唆する。一方、赤芽球系細胞株SKT6はEPOに応答して分子しヘモグロビンを産生する。この細胞にEPO受容体の変異体および優勢抑制型のSTAT5変異体を発現することで、STAT5の活性化がEPOによる赤芽球分化において重要であることが示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
木下 大成 | 東京大学 | 分子細胞生物学研究所 | 助手 |
原 孝彦 | 東京大学 | 分子細胞生物学研究所 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
若尾 宏 | 東京大学 | 分子細胞生物学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(A)
【研究期間】1995 - 1997
【配分額】7,600千円 (直接経費: 7,600千円)