炎症・感染時の好中球細胞死の炎症遷延・臓器障害発生における役割の解明とその防止
【研究分野】外科学一般
【研究キーワード】
好中球 / アポトーシス / ネクローシス / 感染 / サイトカイン / 活性酸素 / 成長ホルモン / CD16 / 炎症性メジエータ / 外科侵襲 / 細胞死 / apoptosis / necrosis / 接着分子
【研究成果の概要】
本研究は、炎症・感染における好中球細胞死とその炎症遷延・臓器障害発生における役割の詳細を明らかにし、さらに重症炎症・感染時の好中球ネクローシス防止、アポトーシス誘導などの対策を開発することを目的とする。本年度は、以下のような研究成績を得た。
1、 健常成人の好中球を各種比率の細菌と混合培養した。フローサイトメトリー、光学顕微鏡、電気泳動法により好中球細胞死を測定した。また、活性酸素産生能とCD16(IgG FcレセプターIII)発現能も測定した。好中球は細菌量が少ない場合はアポトーシス優位で、細菌数が多い場合はネクローシスの形態で細胞が死んだ。細菌の混合比率が高いほど、活性酸素産生能は増強され、CD16発現能は低下した。
2、 健常成人の好中球を各種サイトカイン(TNF-α、IL-Iβ.IL-6、IL-8、GM-CSF、IL-10)と培養し、好中球細胞死を測定した。低濃度TNF-αは単独培養に比べ好中球アポトーシスを抑制、高濃度では誘導を促進した。IL-1β,IL-6、GM-CSFは好中球アポトーシスを抑制した。IL-10はIL-6の好中球アポトーシス抑制効果を減弱した。
3、 健常成人の好中球をGHで前処理、その後好中球細胞死、活性酸素産生能を測定した。GHは好中球アポトーシスを抑制した。GHは好中球活性酸素産生能も増強した。
4、 外科手術患者の末梢血を術前、術後第1-7日目に、腹腔ドレーン排液を術後1-3日目に採取し、好中球細胞死を測定した。また、好中球活性酸素産生能とCD16、TNFレセプター発現能も測定した。末梢血の好中球アポトーシスは術後1日目から術後3日目において抑制され、術後7日目には回復した。腹腔ドレーン排液中の好中球アポトーシスも術後1日目では極めて抑制され、その後に回復した。術後局所の好中球アポトーシスが抑制されているほど、活性酸素産生能が亢進していた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
古川 聡 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 医員 |
韓 一秀 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 医員 |
井上 知己 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 医員 |
HAN Ilsoo | Univ.of Tokyo, Faculty of Medicine Clinical Associate |
井上 知巳 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 医員 |
深柄 和彦 | 東京大学 | 医学部・附属病院 | 医員 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】13,000千円 (直接経費: 13,000千円)