スラヴ世界における文化の越境と交錯
【研究分野】地域研究
【研究キーワード】
スラヴ世界 / 汎スラヴ主義 / スラヴ語 / 亡命文化 / ロシア映画 / 文化受容 / ロシア演劇 / アヴァンギャルド / スラヴ / ナショナリズム / 映画理論 / メディア / 亡命 / 都市文化 / 多国籍 / 言語学 / 民族主義
【研究成果の概要】
1)ロシアと汎スラヴ主義
a)スラヴ民族は、しばしば互いの協力と連帯を求める「スラヴ主義」を唱えてきた。
b)「スラヴ主義」には親ロシア的な汎スラヴ主義と反ロシア的な複スラヴ主義がある。
c)汎スラヴ主義は正教徒の擁護を唱え、ロシアを中心とする拡張主義的傾向が強い。ドストエフスキイはその代表的論客である。
d)複スラヴ主義は多くの場合、反ロシア的か反カトリック的だった。チェコスロヴァキアとユーゴスラヴィアはこの思想を体現した国家だが、複スラヴ主義の破綻とともに、国家としても消滅した。
e)ソヴィエト映画では「スラヴの兄弟」という概念がしばしば謳われているが、この概念はロシアの拡張主義と深く結びついている。
2)亡命と文化の越境
a)第一次ロシア亡命者はスラヴ諸国に多く移住したが、受入国の亡命者への態度はさまざまだった。
b)受入国が亡命者に好意的だった国では亡命文化が開花したが、非好意的な国では開花できなかった。
c)亡命したロシア人演劇関係者は、西欧世界にスタニスラフスキー、メイエルホリドらの最新の演出方法を知らせるのに貢献した。
d)チェコスロヴァキア・アヴァンギャルドのブックデザインは、ロシア構成主義の影響を色濃く受けているが、やがてその影響を克服し、独自のスタイルを生み出した。
3)ナショナリズムとスラヴ語
a)スラヴ諸国においては、近代文章語の成立はナショナリズムの高揚と密接につながっている。
b)国家として独立できなかった民族の言語(たとえば上下ソルブ語)は絶滅の危機に瀕しているが、同時に少数言語として保存させるためのさまざまな方策が今日採られている。
4)以上の成果は成果報告書「スラヴ世界における文化の越境と交錯」(2007)に掲載されているが、同時にホームページhttp:///www.kinet-tv.ne.jp/~yisahaya/Kaken-2.pdf上にも公開されている。
【研究代表者】