結合組織による収縮
【研究分野】動物生理・代謝
【研究キーワード】
棘皮動物 / 結合組織 / キャッチ結合組織 / 収縮 / 神経 / 神経伝達物質 / ウミユリ / ウミシダ / 筋収縮
【研究成果の概要】
ウミユリの巻枝と腕の靭帯を用い、結合組織性収縮の基本的な性質とその神経支配について調べた。
巻枝の電子顕微鏡観察では、巻枝内にはまったく筋細胞は存在しない。体腔上皮(神経)にはGABA(γ-アミノ酪酸)の抗体で染まる細胞があり、その細胞は靭帯方向に突起を出しており、その突起にもGABA抗体で染まるものが見られた。
靭帯に一定の曲げひずみを与え、応力を測定しながらGABAを与えたところ、急激な応力緩和が見られた。これは靭帯が軟らかくなったことを意味する。少数例ながら、応力が増加する例が見られた。これは靭帯が活動的に力を発生して収縮していることを意味する。同様な力学試験を行いアセチルコリンを与えたところ、すみやかに軟らかくなる反応が見られた。ニコチン様のコリン作動薬でも同様であったが、ムスカリン様のコリン作動薬の場合、高濃度では軟らかくなる反応が見られたのだが、低濃度では収縮が見られた。
ウミユリの腕には、関節をはさんで口側には筋肉と靭帯が、反口側には靭帯が存在する。反口側の靭帯のみを切り出し、硬さと収縮の同時測定を行った。高濃度にカリウムイオンを含む人工海水やアセチルコリンの刺激により、靭帯の収縮が見られた。収縮と同時に硬さの減少が見られることが多かったが、硬さの変化を伴わない収縮や、かえって硬くなって収縮する例も見られた。アドレナリンは靭帯を軟らかくし、カリウムやアセチルコリンによる収縮を抑制した。これらの事実から、反口側結合組織による収縮は、口側の筋肉によって引き伸ばされたバネのひずみをキャッチ結合組織を軟らかくすることによって起こるものではないし、また筋肉による収縮なら収縮中に軟らかくなることはないので、それらの機構とはまったく違う、結合組織による活動的な力の発生をともなう収縮であると結論できる。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1997 - 1998
【配分額】2,700千円 (直接経費: 2,700千円)