朱印船のアジア史的研究:16~17世紀、日本往来の「国書」と外交使節
【研究分野】日本史
【研究キーワード】
朱印船 / 外交 / 国書 / 通航証 / 東南アジア / 東アジア / tribute system / 勘合 / 近世日本 / 外交史 / 世界史 / 朱印状 / パスポート / 対外関係 / 使節 / 華夷秩序 / 通航管理 / 外交使節
【研究成果の概要】
主たる成果として、松方冬子編『国書がむすぶ外交』(東京大学出版会、2019年)を刊行し、前近代のユーラシアの全域にみられた「国書外交」とその周辺にあった通航証について明らかにした。おもな論点は、今までtributary system(華夷秩序・朝貢体制・東アジア国際秩序などと訳される)と呼ばれてきたものは、その実態からみるならば国書外交と呼べるものであること、国と国をつなぐ仲介者(商人や宗教者、国書の運び手となることが多い)の役割が重要であること、である。台湾の中央研究院で日明勘合底簿の手掛かりとなる史料を発見するなど、多くの実証的な新知見を明らかにした。
【研究の社会的意義】
近年、歴史学における西洋中心主義が批判され、また日本史・東洋史・西洋史の枠を超えた議論の構築と成果の国際発信(世界の学術への貢献)が求められている。しかし、人文学は多くの部分でその淵源を19世紀のヨーロッパにもち、西洋中心主義を超えるのは容易ではない。本研究では「国書」という「日本語」をキー概念に用いることにより、この問題を克服しようとした。前近代外交史を語るうえで不可欠だが、学術的に注目されたことのない「国書」についての、日本史と東南アジア史のオリジナルな実証研究を組み合わせることで、従来のグローバルヒストリーとは異なる形での世界史を描いた。
【研究代表者】