重症COVID-19合併ARDS・マクロファージ活性化症候群の新規治療戦略の確立
【研究キーワード】
マクロファージ活性化症候群 / 炎症性サイトカイン / 間質性肺炎 / COVID-19 / 急性呼吸窮迫症候群
【研究成果の概要】
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、重症者ではサイトカインが過剰に産生され、強い炎症が全身で引き起こされるため、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)による呼吸不全や、マクロファージ活性化症候群(MAS)による肝障害や血球減少を引き起こし、時に多臓器不全から死亡に至るが、その機序は未知の部分が多い。
COVID-19の治療戦略には、ウイルス増殖抑制に加え、サイトカイン・ケモカインなどを放出する炎症細胞の活性化を阻害し、過剰な炎症を制御する必要があることがこれまでの臨床経験から判明しているが、現在広く用いられているステロイドなどの免疫抑制薬は、2次感染を誘発するため、直接的に免疫抑制作用を有しない新規治療戦略の確立が求められている。
本研究では、重症COVID-19の病態を直接的に反映すると考えられるARDS-MASマウスモデルに加え、重症COVID-19の基礎疾患の一つである肺気腫のモデルであるエラスターゼ気管内投与による肺気腫マウスモデルなどを用いて、それらに共通する炎症経路を特定し、COVID-19重症化に寄与する病態因子(サイトカイン・ケモカインなど)を明らかにすることことを目的に研究を進めている。動物モデルで候補となった病態因子は、実際のヒト肺において、どのように作用しているかを検証していく。
間質性肺炎は、COVID-19感染における重症肺傷害の明らかな基礎疾患であることから、外科的切除により摘出された種々の間質性肺炎患者肺に共通している炎症経路を特定し、初代培養細胞などを用いてその病的意義を検証する。
動物モデルと実際の患者肺において、共に活性化している炎症経路を特定し、見出された病態因子が実際のヒト肺にてどのような役割を果たしているのかを解明し、治療標的となる経路を特定することで、重症COVID-19合併ARDS・マクロファージ活性化症候群の新規治療戦略の確立を目指す。
【研究代表者】