胃癌の腹膜播種治療における細胞接着因子インテグリンβ4の有用性に関する検討
【研究分野】消化器外科学
【研究キーワード】
胃癌 / 腹膜播種 / アンテグリンβ4 / アポトーシス / インテグリンβ4 / ヒト胃癌
【研究成果の概要】
胃癌におけるインテグリンβ4発現の臨床的意義をさらに明らかにするため、本大学病院関連施設からStageIIIおよびStageIVの進行胃癌手術検体を集め、それらのインテグリンβ4発現を評価している。平成12年4月より現在までに約100検体が集まっており、インテグリンβ4発現が陰性の検体が約10%に認められている。目標は400検体であり、目標数達成後、それら担癌患者について追跡調査を行い、腹膜播種再発等の臨床的背景因子とインテグリンβ4発現との関連についてprospectiveに評価する予定である。
インテグリンβ4を介した胃癌細胞のアポトーシス誘導の機構について、既知のアポトーシス関連分子(Bcl-2、BAG-1、BAX)、癌抑制遺伝子(p53、Rb)、細胞増殖因子(CDK、CDK inhibitor)の発現を、各種胃癌細胞株とインテグリンβ4導入胃癌細胞株を用いて検討した。その結果、インテグリンβ4を発現する胃癌細胞株では、アポトーシス誘導条件下でCDK inhibitorであるp21が誘導されることが明らかとなった。しかし、その他の既知の分子の発現との関連は認めなかった。
インテグリンβ4を用いた腹膜播種治療の実験的検討として、胃癌細胞株を用いたSCIDマウスの腹膜播種モデルを作成し、腹膜播種結節形成後に腹腔内へ発現ベクターに組み込んだインテグリンβ4遺伝子の注入を行った。注入後2週目にSCIDマウスを屠殺し、腹膜結節数および重量についてコントロール群と比較したが、両群間で有意差は認めなかった。この結果は、腹膜結節の細胞内にはインテグリンβ4の発現が認められず、腹膜結節内へのインテグリンβ4の導入が出来なかったためと考えられた。現在、腹膜結節内へのインテグリンβ4の導入方法について検討中である。
【研究代表者】