地域型組織移植バンクネットワークに関する研究
【研究分野】胸部外科学
【研究キーワード】
同種組織 / 凍結保存 / 組織移植 / 組織バンク / ネットワーク
【研究成果の概要】
1.同種組織採取ネットワークの設立
研究協力施設を中心として同種組織採取ネットワークを設立した。メンバーは、北海道大学、東北大学、岩手医科大学、秋田大学、埼玉医科大学、東京大学、名古屋大学、日赤中央血液センターである。これらの施設に、同種組織のドナーが現れた際組織採取に出動できるようソフト面ハード面の体制確立を要請し、実現された。
2.同種組織の採取・保存
東京大学組織バンクを中心に、皮膚を中心とした杏林大学組織バンクチームと密接な連携をとりながら、ドナー情報の獲得につとめた。その結果、組織提供のドナー数はこの3年間で37例に上り、本研究開始前は年平均6例であり、飛躍的に増大する結果となった。
3.同種組織の使用・搬送
現在までに計100例超の凍結保存同種組織を使用した。本研究開始前はわずかに7例であり、本研究開始によって急激に使用数が増大した。内訳は、大動脈弁26例、肺動脈弁18例、上大・下大・腸骨静脈23例、下行大動脈8例、腹部大動脈3例、大腿動脈4例、大腿静脈17例、門脈4例、大伏在静脈3例である。いずれも組織損傷無く凍結保存状況は良好であった。これら使用組織は主として東大組織バンクに所属する施設(心臓外科、肝臓外科)で使用されたが、全体の3分の1は東大以外の施設にシッピングしたものである。適応疾患は、感染性心内膜炎、感染性仮性動脈瘤、自己肺動脈移植術(Ross手術)が主なものであった。成績は、凍結保存同種組織に起因した死亡はなく、代用組織として(特に感染症例や先天性心疾患において)人工材料では得られない良好な結果が得られた。
4.Wet Labの開催
組織採取の実際の手順を学んでもらうために、各施設の実務者の医師に東大に集まっていただき、豚心臓を用いて心臓弁の摘出とトリミング、解凍の実際を各自に実習形式で研修してもらった。このWet Labにより、参加者の組織採取の技術が向上した。
【研究代表者】