p21遺伝子導入による中枢神経系細胞のアポトーシスの回避
【研究分野】脳神経外科学
【研究キーワード】
P21 / 局所脳虚血 / 軽度脳虚血 / アポトーシス / 即時遺伝子 / ストレス遺伝子 / グリア細胞 / P21強制発現 / p21 / p21強制発現 / 細胞周期
【研究成果の概要】
p21遺伝子の発現を各種脳損傷モデルで検討し、他の遺伝子発現との類似性と差異を検討した。その結果、局所脳虚血モデルではP21遺伝子は虚血後12-24時間後に最も強い発現を認め、発現部位は虚血部と周辺脳および虚血側海馬であった。この発現は即時遺伝子であるc-fosやc-jun、ストレス遺伝子であるhsp70の発現よりは遅れ、これらとは異なった細胞内シグナル伝達をしていることが示唆された。また発現細胞はニューロンが中心であり、p21蛋白の発現も同時にみられることをWestern blotにより確認した(Maturation Phenomenon II)。このp21発現はアポトーシスをきたす軽度脳虚血モデルでも検討したが、虚血側海馬で24時間から120時間にわたって発現が持続した(Neuro-report1997)。この時間には一部の細胞でアポトーシスはすでに完成していた。これらのデータから、p21は虚血損傷後の修復に関与すること、ならびにp21はアポトーシス回避のために働いていることが示唆された。同様な所見は外傷モデルでも得られた(Brain Res1998)。次にp21の発現を制御する物質をグリア細胞株の培養系で検索したところ、プロスタグランディン誘導体でp21遺伝子と蛋白の発現が増強され、この物質がp21を介したアポトーシス回避に利用できる可能性が示唆された(J Blochem1998)。p21を組み込んだアデノウイルスベクターを用いた脳内強制発現と治療実験については、現在施行中で、今だ結果が出ていない。
【研究代表者】