心臓におけるErbB受容体シグナルの機能解析
【研究分野】循環器内科学
【研究キーワード】
受動体チロシンキナーゼ / ドミナントネガティブ変異体 / トランスジェニックマウス / 心不全 / シグナル伝達系 / ミトコンドリア / アポトーシス / トランスクリプトーム / 受容体チロシンキナーゼ
【研究成果の概要】
Epidermal growth factor receptor (EGFR), ErbB2, ErbB3, ErbB4により構成されるErbBファミリーの受動態チロシンキナーゼは細胞増殖や分化、肥大など様々な細胞応答において重要な役割を果たしている。また、ErbBシグナルは多様で機能重複が存在する。
ErbBシグナルの心筋細胞における役割を生体レベルで解析するために、細胞内ドメインを欠失したEGFRドミナントネガティブ変異体をα-myosin heavy chainプロモーターによって心筋特異的に発現するトランスジェニックマウス(EGFR-DNマウス)を作成した。EGFR-DNマウスの心臓では、EGFやheparin-binding EGF-like growth factorによるEGFR, ErbB2, ErbB4のチロシンリン酸化、およびneuregulinによるErbB2, ErbB4のチロシンリン酸化が抑制されていた。その結果、ほとんどのTGは症候性の心不全をを呈し、5~20週齢で死亡した。TGでは心内腔の拡大と心室壁の菲薄化が見られ、心エコーでは心機能低下が認められた。また、EGFR-DNマウスの心臓ではTUNEL陽性の心筋細胞の有意な増加が見られるとともに、心不全発症前の2週齢の心臓から抽出したRNAサンプルを用いてGenechipを用いた遺伝子発現プロファイリングを行った結果、抗アポトーシス作用を有するBc12やBc1xLの発現低下が認められた。さらに、電子顕微鏡では、電子密度の減少した特徴的なミトコンドリア像が見られた。したがって、ErbBシグナルは心筋細胞においてミトコンドリアの構造機能の恒常性維持、さらにBc12やBc1xLの発現を転写レベルで維持することで、心筋保護的に作用している可能性が示唆された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
小室 一成 | 千葉大学 | 大学院医学研究院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2005 - 2006
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)