胸腺上皮細胞の機能と遺伝子発現の解析
【研究分野】免疫学
【研究キーワード】
胸腺 / マクロファージ / 樹状細胞 / アポトーシス / 上皮細胞 / T細胞 / サイトカイン / 抗原提示 / 免疫 / リンパ球
【研究成果の概要】
免疫系の中心的役割を担うT細胞は、胸腺において分化・成熟する。造血幹細胞からリンパ球系にコミットした前駆細胞は、胸腺に入りT細胞へと分化する。この分化のプロセスは詳細に研究されており、CD4-/CD8-のdouble negative (DN)胸腺細胞はCD4+/CD8+を経てCD4+/CD8-あるいはCD4-/CD8+のT細胞へと分化・成熟する。この間に、T細胞受容体(TCR)遺伝子の再構成が起こり、自己MHCを認識しないTCRを持つクローンおよび自己抗原に強いaffinityをもつクローンは排除される。しかし、通常の胸腺には細胞死を起こした細胞は頻繁には認められないことから、排除された胸腺細胞を迅速に処理する細胞の存在が考えられる。
本研究では、胸腺内にCD4陽性のマクロファージが存在することを認め、この細胞集団について検討を重ねた。CD4陽性マクロファージは蛍光ビーズあるいはアポトーシスを誘導した胸腺細胞を効率良く貪食する活性があり、その活性は胸腺内あるいは腹腔内の通常のCD4陰性マクロファージに比べてはるかに高いことが明らかになった。さらに、CD4陽性マクロファージは胸腺の発達とともに肥大化するが、Rag1欠損マウスではT細胞分化が起らず、したがって死細胞も生じないためにCD4陽性細胞の肥大化も認められなかった。これらの結果から、胸腺内のCD4陽性マクロファージはprofessionalなスカベンジャーであることが強く示唆させた。
このD4陽性マクロファージはT細胞の選択が起る髄質と皮質の境界領域に存在していた。この領域にはOncostatin M受容体が発現しており、胸腺細胞をOSM存在下に培養すると、OSM応答性の胸腺上皮細胞が得られた。この上皮細胞を未分化胸腺細胞と共培養すると、CD4陽性マクロファージが出現するとの結果が得られ、上皮細胞がCD4マクロファージ分化に重要であることが示された。OSMは生体内においてTECに直接作用し、胸腺構造の構築に寄与している可能性が変異マウスの解析から示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
田中 稔 | 東京大学 | 分子細胞生物学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
関根 圭輔 | 東京大学 | 分子細胞生物学研究所 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2002 - 2003
【配分額】13,900千円 (直接経費: 13,900千円)