内耳障害の病態形成におけるネクロプトーシスの役割の解明と治療への応用
【研究キーワード】
内耳障害 / アポトーシス / ネクローシス / ネクロプトーシス / アミノ配糖体 / 有毛細胞 / 蝸牛 / 内耳 / 難聴
【研究成果の概要】
細胞死は、分子によって制御された細胞死であるアポトーシスと、それ以外の受動的な細胞死であるネクローシスとにこれまで分類されてきたが、近年の研究により、ネクローシスの中にも、分子によって制御されるネクロプトーシスが存在することが明らかにされた。
本研究では、マウスより摘出した、蝸牛の器官培養を用いて、耳毒性物質ゲンタマイシン(GM)によって誘導される有毛細胞障害について、アポトーシス、ネクローシス、ネクロプトーシスの関与について解析を行った。GMによる内耳障害には、アポトーシス、ネクローシス、ネクロプトーシスのいずれもが関与し、それぞれの阻害薬で内耳障害の軽減がみられた。
【研究の社会的意義】
感音性難聴や末梢前庭障害等の内耳疾患は頻度の高い身体障害であるにもかかわらず、その根本的な治療は未だ確立されていない。薬剤性内耳障害や騒音性難聴、老人性難聴においては、それらの発症に有毛細胞内の酸化ストレスに起因するアポトーシスが深く関与することが示されている。しかしながら、これらの障害に対する抗酸化剤やアポトーシス阻害薬の効果は部分的であり、非アポトーシス細胞死の関与が予想される。
本研究では、耳毒性薬物による内耳障害には、アポトーシスのみならず、ネクローシスやネクロプトーシスも関与することを明らかにした。この研究成果は、内耳障害に対する新規治療の開発に貢献するものである。
【研究代表者】