自己免疫疾患におけるB細胞表面抗原RP105の解析
【研究分野】内科学一般
【研究キーワード】
B細胞 / RP105 / SLE / シェーグレン症候群 / 皮膚筋炎 / アポトーシス / 抗DNA抗体 / IgG / 免疫グロブリン / 自己抗体 / 活性化B細胞 / ステロイド / apoptosis
【研究成果の概要】
RP105は近年、三宅らによりほとんど全てのB細胞上に同定された新しい分子であるが、ヒトにおける機能はまだ解明されていない。われわれは、全身性自己免疫疾患患者の末梢血、及び組織のリンパ球におけるRP105の発現を、また、in vitroにおいてその機能を解析した。健常者B細胞はそのほとんどがRP105を発現していたが、SLE、シェーグレン症候群(SjS)、皮膚筋炎(DM)の3疾患ではRP105を発現していない陰性のB細胞が多く、それぞれ15.9%,14.5%,20.2%と著明に増加していた。このRP105陰性B細胞は、他のphenotypeの検討から非常に活性化され、分化した状態にあるB細胞であることがわかった。SLEで詳細な検討を行ったところ、RP105陰性B細胞の比率はSLEの疾患活動性と明らかな正の相関を示し、疾患の寛解とともにその比率は健常者なみに低下した。
SjS患者の小唾液腺組織の免疫染色の結果、炎症部位にはRP105陰性B細胞の浸潤が大半を占め、その割合は血清免疫グロブリン濃度とよく相関することが明かとなった。また、DMの末梢血におけるRP105陰性B細胞比率の高値は、ほとんど健常者と差がないほどの低値を示す多発筋炎(PM)患者のそれと好対照をなし、両疾患が免疫学的に異なることを示唆した。
in vitroにおける解析では、RP105陰性B細胞はステロイドによりアポトーシスに陥りやすいことが証明され、このことが治療によるSLEの活動性抑制と関連することが示唆された。さらに、SLE患者のRP105陽性B細胞は、刺激を加えても全く免疫グロブリンの産生をしないのに対し、陰性B細胞は刺激なしでも非特異的なIgG,IgMに加え、自己抗体の代表である抗DNA抗体を産生できることが見事に証明できた。
このように、液性免疫が主体をなす自己免疫疾患の発症病理にはRP105陰性B細胞が重要な役割を演じていることが示唆され、今後さらに詳細な分子機構の解明を進めていく予定である。
【研究代表者】