心不全の遺伝子治療・細胞移植治療
【研究分野】循環器内科学
【研究キーワード】
LIF / 心筋梗塞 / プラスミド / 心臓リモデリング / VEGF / GFP / 骨格筋 / 共培養 / アポトーシス / 血管新生 / 骨髄細胞 / 遺伝子治療 / 幹細胞 / 心筋細胞 / 骨格筋細胞 / ANP / GATA / 心不全 / 心筋細胞分化 / BMP / TAK / Smad / ATF-2
【研究成果の概要】
leukemia inhibitory factor(LIF)の心臓に対する作用をマウスの心筋梗塞モデルを用いて検討した。心筋梗塞後のマウスの下肢にLIFのプラスミドを筋肉内注射したところ、2日後より血液中のLIF濃度は増加し、その後4週間後まで持続した。心筋梗塞を作成してから2週間後に心臓を評価した。LIFプラスミド注射群(LIF群)ではコントロール群に比べ、心筋梗塞後の心機能の低下や心臓リモデリングは軽減していた。梗塞境界領域での心筋細胞のアポトーシス数もコントロール群に比べLIF群で減少していた。LIF群ではVEGFの発現の亢進と血管内皮細胞の増加が認められたことより、LIFによる血管新生が心筋細胞のアポトーシスを減少させている可能性が示唆された。増殖している細胞の核で発現するKi-67蛋白の抗体で免疫染色をおこなったところ、LIF群では梗塞境界領域でKi-67陽性の心筋細胞が認められた。次にGFPトランスジェニックマウスの骨髄細胞を野生型マウスに移植し心筋梗塞を作成して解析をおこなった。LIF群ではコントロール群に比べ2週間後の梗塞境界領域におけるGFP陽性細胞数が増加していた。さらにこのGFP陽性細胞が心筋細胞や血管内皮細胞であることを確認した。今回の研究でウイルスベクターを使わなくとも、プラスミドの筋肉内注射のみで有効な治療効果が得られることも明らかとなった。
骨格筋内に心筋細胞へ分化可能な細胞が存在するか否かを検討するため、GFPを過剰発現するマウスの骨格筋由来細胞を単離し、1)新生仔ラットの心筋細胞と共培養、2)骨格筋由来細胞の単独培養、3)心筋細胞と培養液のみ共有するdouble chamber法による共培養、の3通りの方法で培養した。培養5日後に免疫細胞染色法により心筋特異的トロポニン、ANP、GATA4、cadherin、connexin43の発現を比較検討した。その結果、両者の細胞が互いに接することが可能な共培養下においてのみGFP陽性細胞の一部にトロポニン、ANP、GATA4の発現が認められた。また骨格筋由来細胞と心筋細胞との細胞間接着部位にcadherinとconnexin43の発現が認められた。これらの結果から骨格筋内に心筋細胞に分化可能な細胞が存在することが明らかになった。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
廣井 透雄 | 東京大学 | 医学部付属病院 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2000 - 2002
【配分額】14,900千円 (直接経費: 14,900千円)