進路意思決定における認知・感情過程のモデル化
【研究分野】教育・社会系心理学
【研究キーワード】
意思決定 / 進路選択 / 後悔 / 進路指導 / 原因帰属 / 大学受験 / 高校生 / 進路 / 認知的不協和
【研究成果の概要】
本研究の目的は,第1に,高校生の進路決定プロセスを支える認知的メカニズムを明らかにし,第2に,満足や後悔などの感情要因の影響を明らかにすることである.高校3年生時調査(計1520名)と卒業後の追跡調査(のべ600名)によって以下の点が明らかになった.
進学者の事前期待と満足に関しては,以下の通りである.
1 進学動機に関しては,進路選択時には,学びたい分野,興味のある分野,就きたい職業などを期待して進学先を選択している.入学後は,期待ほどには満足していないが,同様の目的を持つ友人を得ることについては満足が得られている.
2 進路決定時の考慮条件に関しては,コンピュータ等の設備,興味ある科目,友人,キャンパスの綺麗さ,教員の質の項目を除き,期待よりも満足が小さい.全体的に見て,第一志望ではない学校に進学した者の方が満足の程度が低い.
3 分野や科目に関する事柄に満足し,経済的・物理的条件に満足し,第1志望校に進学しているほど,進路選択に関する満足は大きい.
進路意思決定における類推の役割に関しては,特に,体験談を自分の進路決定にどのように役立てるかを検討し,以下の点が明らかになった.
4 志望大学の学生・先輩などの体験談が属性効用方略に影響を与えている
5 進学動機(得意分野を伸ばす,エンジョイする,社会的地位を得る)によって体験談の利用の仕方が異なる.
6 体験談を利用する生徒の方が長期的展望をもって意思決定を行っている.
高校生の進路決定における意思決定スタイルと後悔に関しては,以下の通りである.
7 受験校を決定するプロセスには,分析的意思決定スタイル→属性効用型および絞込み型→安全校の効用→安全校受験,完全型→チャレンジ校の効用→チャレンジ校受験の2つがある.
8 分析的意思決定スタイルは後悔や失望などのネガティブな感情を低減するだけでなく,後悔への対処法にもポジティブな影響を及ぼす.
【研究代表者】