認知症看取りケアの社会学的研究
【研究キーワード】
認知症 / 看取りケア / 家族介護 / 医療社会学 / 家族社会学 / 延命医療
【研究成果の概要】
本研究の目的は、終末期を迎えた認知症患者の意思を、介護者たちがどのように読み取り、解釈しているのか、特に介護家族の役割に注目しながら明らかにすることだ。認知症介護においては現在、患者本人の意思の尊重が重要な目標として掲げられている。しかし、認知症が記憶障害やコミュニケーションの障害を特徴とする以上、様ざまな困難が生じる。そこで介護家族はしばしば、患者のライフヒストリーに基づいて患者本人の意思を解釈し、選択を代行しようとするが、それでも限界が生じる。
そうした困難を先鋭化させたのが、2020年から続くコロナ禍である。本年度は、コロナ禍における特徴的なケースとして、介護施設Xでの「リモート面会」の調査を発展させた。施設Xでは「リモート面会」として、高齢者の居住スペースと面会用スペースをビデオ会議システムで中継する試みを始めた。本年度は、長年の調査対象者である介護家族Iから協力を得て、Iと実母Kのリモート面会場面を継続的に調査した。
本年度は、その調査成果の中間報告を、日本家族社会学会大会で実施した。リモート面会は、介護施設や認知症患者に対し、新たな負担を「足す」試みとなってしまう。そこで介護家族は、しばしば、その制度を利用することに葛藤を覚える。今回の調査では、Iがこのリモート面会に、「K(認知症患者)の状態を維持する」という価値を見出し、リモート面会に通い続けていることに注目した。その患者の状態は、様ざまな成約がある中で行われる相互行為の中で、介護家族が推し量ったものだ。この報告では、「足りないことを前提とした相互行為」というキーワードを用い、認知症患者本人の状態を介護家族がどのように解釈しているか、精査した。
コロナ禍により、認知症看取りケアにおける課題は、さらに深まったと言える。今後も、これまでに収集したコロナ禍前のデータの分析に加え、コロナ禍における調査を発展させる予定だ。
【研究代表者】
【研究種目】若手研究
【研究期間】2019-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)