COVID-19の味覚障害発生機序の解明:ACE2-BDNF連関からのアプローチ
【研究キーワード】
COVID-19 / 味覚障害 / 味蕾 / ACE2 / BDNF
【研究成果の概要】
COVID-19の症状の1つとして味覚障害が認められ、現在までの研究では、嗅覚に関連する支持細胞にSARS-CoV-2の感染が生じ細胞障害による影響が示唆されている。しかし、申請者の研究では、味細胞にもSARS-CoV-2の直接的な感染を引き起こす可能性が明らかなことから、味覚障害の原因がSARS-CoV-2の味細胞への感染による細胞代謝の異常が示唆される。すなわち、「COVID-19の味覚障害には、SARS-CoV-2の味細胞への感染に伴うACE2の発現低下による代謝障害が影響するか」という極めて重要な学術的な問いを見出すに至った。本研究では、この学術的な問いに応えるために、味細胞培養細胞株および遺伝子改変動物を用いて分子生物学にそのメカニズムを明らかにすることを目的としている。
今年度の味細胞培養細胞株を用いた実験系は、偽型SARS-CoV-2侵入におけるACE2、TMPRSS2、Furinの感染への役割を解明するためにPseudo Host/Pseudo SARS-CoV-2 BacMam Systemで、味蕾由来培養細胞に偽型SARS-CoV-2を培養液に添加し、この偽型ウイルスが細胞に侵入するかの確認を行った。遺伝子改変動物を用いた実験系は、ACE2ノックアウトマウスにおける味覚異常メカニズムを解明するために、今年度からACE2ノックアウトマウスの繁殖を開始した。同時に数匹の老齢ノックアウトマウスを用いてH-E染色による舌乳頭に存在する味蕾の組織学的検索を行い味蕾の数や大きさなどの確認を行った。その結果次のような知見が得られた。先ず培養味細胞における遺伝子発現量の解析をRT-PCR法を用いて行ったところ、ACE2遺伝子の発現量が想定より少なかった。但し、新規に購入した味細胞株の培養条件について、いくつか見直す必要があるため、現在培養液の成分調整などをしながら確認実験をすすめている。次にACE2KOマウスの舌のH-E染色像を観察したところ、茸状乳頭や有郭乳頭に存在する味蕾が認められた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
猿田 樹理 | 神奈川歯科大学 | 歯学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
杉本 昌弘 | 東京医科大学 | 医学部 | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)