骨芽細胞KUSA-A1を用いた低分子の骨形成促進物質(因子)の同定
【研究分野】実験病理学
【研究キーワード】
骨芽細胞 / KUSA-A1 / 骨細胞 / 骨形成 / 低分子 / 骨形成促進 / 液性因子 / 低分子化合物 / 細胞転換 / ニューロン / 神経 / 骨形成因子 / 骨髄 / 間質細胞
【研究成果の概要】
骨代謝の問題は、今後、時代とともにクローズ・アップされてくることは間違いない。特にさまざまな原因から生じる骨粗鬆症に対する薬剤は重要な意味をもつ。高齢の人口の増加に伴う「老化による骨基質の減少」は、寝たきり老人、手術後の骨基質の減少を含め、その課題は避けることができない。同時に、閉経後のご婦人の骨折も同様の意味を持つ。社会性と言う点では、ダイエットによる骨がもろくなる現象は注目されてはいるものの、カルシウム製剤のみでの対応がなされているにすぎない。将来のことではあるが、宇宙時代の無重力状態では骨基質の著明な減少が知られている。重力のない状態で骨細胞に対して作用する薬剤の発見は人類にとっても福音となる。低分子の骨形成因子の発見の意義は、特に社会的問題を鑑みると極めて重要であると考えられる。
そのような観点から、成熟骨芽細胞であるKUSA-A1細胞の全ての遺伝子の発現プロファイルを決定した。骨代謝の問題を考える時に、骨芽細胞の特性を明確にすることは特に必要不可欠である。従来は,個々の分子に関して、生化学的にそして生理的に研究が進められてきたが、ランダム塩基配列決定法ならびにgene arrayを用いることで全遺伝子の発現の定量を行った。KUSA-A1細胞は成熟骨芽細胞の特徴を有し、生体内で骨形成能を有するが、この特徴を活かし、受容体またシグナル伝達系の分子の発現量を決定し、結果を随時インターネット上に公開し、広く研究者に利用可能とした。その情報はさまざまな液性因子の反応性を推測できるばかりでなく、ドラッグ・デザインにも重要な情報である。骨形成に関わる機構を考慮しながら、各種疾患の機序またその治療を押し進める上での分子基盤を明確にすることは、我々自身により成熟骨芽細胞株を単離したことを考えあわせると、極めて重要な意味がある。
【研究代表者】