泌尿器系癌におけるNFκBの病態生理学的意義と新規NFκB阻害剤の有用性の検討
【研究分野】泌尿器科学
【研究キーワード】
NF-κB / 泌尿器系癌 / アポトーシス / 転移 / 悪液質 / 前立腺癌 / 放射線治療 / 細胞周期 / IL-6 / STAT3 / 膀胱癌 / 殺細胞効果
【研究成果の概要】
NF-κBは炎症性サイトカインや抗アポトーシス蛋白の誘導など様々な生体反応に関与している転写因子であり、泌尿器科系悪性腫瘍においても、癌の進展や転移、抗癌剤や放射線治療に対する抵抗性、悪液質などの腫瘍随伴症候群など様々な病態生理に関与していると想定される。dehydroxymethylepoxyquinomicin(DHMEQ)は新規に合成された強力なNF-κB阻害である。NF-κBはホルモン抵抗性前立腺癌や浸潤性膀胱癌において恒常的に活性化されており、DHMEQはNF-κB活性を抑制し、アポトーシスを誘導することを見出している。さらには前立腺癌の放射線抵抗性においてNF-κBの活性化が重要な役割を果たしており、DHMEQで前処置することにより放射線感受性を高めることが示され、その効果はG2/M cell cycle arrestを介するものであった。さらにはサイトカイン産生膀胱癌細胞であるKU-19-19細胞に対してアポトーシスの誘導と血管新生阻害を介して抗腫瘍効果を示すことを見出した。また、MBT-2細胞を用いた肺転移モデルにおいてもDHMEQが肺転移を抑制することが示された。一方、進行性前立腺癌患者ならびにJCA-1担癌マウスにおいて、NF-κB依存性サイトカインであるIL-6の血清濃度が増加しており、IL-6が血清アルブミンやコレステロール値、ヘモグロビン濃度やbody mass indexさらには生存率などと関連していることが示された。担癌マウスにおいてDHMEQは血清IL-6を抑制し、悪液質を改善した。このように、DHMEQによるNF-κB活性の抑制は進行性泌尿器系癌に対する新たな分子標的治療となりうることが示唆された。
【研究代表者】