正常―がん細胞間作用に基づくがん防御機構の化学生物学的解析
【研究キーワード】
がん / ケミカルスクリーニング / 発がん
【研究成果の概要】
がん細胞のまわりを取り囲む正常細胞は、がん細胞の増殖とその領域拡大を抑制する機能が備わっている。しかし、この機能が破綻もしくは減弱すると、がん細胞は正常な組織を破壊しながら増殖を続け、腫瘍を形成するようになる。我々は、KRAS発現細胞(がん細胞モデル)と正常細胞との混合培養系を用いて、正常細胞のもつこの機能を強化する化合物のスクリーニングを行った。その結果、構造も既知活性も異なる3つのヒット化合物(α、β、γ)を獲得した。2021年度は、(1)ヒット化合物の標的タンパク質のアフィニティー精製及び質量分析による同定、(2)ヒット化合物添加時の正常細胞・KRAS発現細胞での発現変動遺伝子の解析、(3)ヒトがん細胞株を用いたヒット化合物への感受性評価を行なった。(1)について、化合物αの20種類の類縁体の評価を行い、ある程度の構造活性相関を得ることができた。現時点で抗がん作用との関連が期待される標的タンパク質の同定には至っていないが、類縁体の解析で得られた知見も活用しながら、引き続き質量分析のシステムを変えて検討を進めている。 (2)について、ヒット化合物(α・β)を添加した際に正常細胞側で特異的に変動する遺伝子群を同定することができた。また、ウエスタンブロッティングによるシグナル伝達経路の解析から、化合物α・βで処理した際に正常細胞内で特異的に活性が変化するシグナル関連タンパク質を見出した。(3)について、26種のヒトがん細胞株を用いて、ヒット化合物(α・β)がもたらす抗がん活性を検討した結果、化合物への感受性を指標に細胞株を分類することができた。そのうち9種の細胞について詳細に検討したところ、各細胞が示す化合物α・βへの感受性には相関があることを見出した。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
渡邉 信元 | 国立研究開発法人理化学研究所 | 環境資源科学研究センター | ユニットリーダー | (Kakenデータベース) |
|
【研究種目】挑戦的研究(萌芽)
【研究期間】2021-07-09 - 2024-03-31
【配分額】6,370千円 (直接経費: 4,900千円、間接経費: 1,470千円)