膵癌細胞における上皮由来増殖因子シグナルの解析とアポトーシス抵抗性機序の解明
【研究分野】消化器内科学
【研究キーワード】
膵癌 / アポトーシス / EGFシグナル / cancer stem cell
【研究成果の概要】
膵癌細胞におけるEGF受容体の発現レベルとアポトーシス感受性の相関を解析するため、real time PCR法により膵癌細胞株のEGF受容体mRNA発現レベルを、western blot法によりEGF受容体蛋白レベルを解析した。膵癌細胞株として、Panc-1、MIA PaCa-2、Capan-1、Capan-2、BxPC-3を用いた。アポトーシス感受性感受性解析は、annexin V染色法、DAPI染色による蛍光顕微鏡観察を行った。アポトーシスの誘導は、抗がん剤(5-fluorouracil,cisplatin,bleomycin)、TNF-related apoptosis-inducing ligand(TRAIL)、放射線照射を用いた。しかしながら解析した細胞株において、EGF受容体発現レベルとアポトーシス感受性の間に明らかな相関関係は認められなかった。また、EGF受容体遺伝子変異をdirect sequencing法にて解析したが、上記細胞株において明らかな受容体変異は認められなかった。
そこで次に我々は、上記膵癌細胞を用いてside population(SP)法を用いた癌幹細胞の分離培養を行った。分離したSP細胞は、非SP細胞と比較して腫瘍形成能が高く、アポトーシス抵抗性であることが明らかになった。さらに、TGF-betaあるいはEGFによるepithelial-mesenchymal transition(EMT)を誘導した際には、SP細胞において顕著なEMTが観察され、著しい転移、浸潤能の増強作用が観察された。抗癌剤抵抗性のSP細胞は、膵癌における転移、浸潤を抑制するための標的細胞と考えられ、本研究の結果は、あらたな分子標的治療を構築する上で重要な事実を提供するものと考えられた。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
高石 官均 | 慶應義塾大学 | 医学部 | 助教 | (Kakenデータベース) |
泉谷 幹子 | 慶應義塾大学 | 医学部 | 嘱託(非常勤) | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2006 - 2007
【配分額】3,920千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 420千円)