返還後の香港の社会変容と周辺地域への影響に関する調査研究
【研究分野】政治学
【研究キーワード】
香港 / 1997年返還 / 中国 / 社会変容 / ネットワーク / コモンウェルス / アイデンティティ / 1国2制度 / 返還 / 文化変容 / 一国二制度 / コモンウェルマ / 香港返還 / 華人 / 家族 / 沖縄 / 台湾 / 宗族
【研究成果の概要】
1997年返還から2年を経過した香港は「1国2制度」の経験を蓄積しつつある。中国の経済発展の延長線上で、香港返還がどのような地域的意義を持つのか、わが国でも関心を持たれている。本研究は、香港・中国のみならず、華人ネットワークが展開される東南アジア、さらに香港と浅からぬ関係を持つ北米大陸やヨーロッパを視野に入れて、返還を跨ぐ香港の政治・経済・社会の変化と連続を検討した。現地調査は香港・台湾・中国・シンガポール・インド・アメリカ・オーストラリアで行われた。本プロジェクトでは(1)住民の政治意識、(2)経済環境、(3)社会環境、(4)香港と周辺地域との関係の4つの分野をとりあげた。(2)と(3)は本プロジェクトでは密接に関連していた。(1)については、谷垣が電話聞き取り調査やアンケート調査を利用したアイデンティティの問題の考察した。容は香港アイデンティティの形成において「日本」がどのように作用するのかを解明した。倉田は「1国2制度」下の香港の政治発展を考察した。(2)については、濱下と飯島、帆刈が担当した。そこでは公表された経済指標に限定されることなく、現地調査によって制度的変化を含む経済環境の変化を分析した。濱下は華人系ネットワークとインド系ネットワークの比較研究の可能性を指摘した。飯島と帆刈は疾病の伝播を通じた香港ネットワークの歴史性と中国医学の制度化の問題をとりあげた。この2つの事例研究はいずれも香港の社会環境と深く関連している。(4)については若林が台湾と香港との関係を分析し、愛が香港のコモンウェルス史への位置づけを試みた。中津は文化革命期における香港左派の問題をとりあげて、香港・中国関係の新しい研究対象を発掘した。さらに、香港との比較研究の対象として、岩間は民国期の上海のホワイトカラー層を、吉永は民国期の回民アイデンティティの事例研究を行った。
【研究代表者】