Klotho遺伝子、GSTP遺伝子を標的とした肺気腫遺伝子治療の実験的検討
【研究分野】呼吸器内科学
【研究キーワード】
COPD / 遺伝子治療 / Glutathione S-transferase P1 / Klotho遺伝子 / 慢性喫煙 / アデノウイルスベクター / アポトーシス / 慢性閉塞性肺疾患(COPD) / 肺気腫 / グルタチオンSトランスフェラーゼ
【研究成果の概要】
Glutathione S-transferase P1 (GSTP1)はGSTのサブタイプ一つで、毒性物質に対するグルタチオン抱合を触媒する。Glutathione (GSH)は哺乳動物において最も豊富な細胞内抗酸化物質であり、多くの酵素機能や免疫能の維持に必須の重要な蛋白質である。GSTP1は、このGSHの代謝に関わるわけではなく、GSHの酵素機能の調節に主に関わっている。GSTP1は肺胞、肺胞マクロファージや呼吸細気管支において他のGSTよりもより強く発現していることが報告されており、肺気腫が形成される末梢気道において重要な役割を果たしている可能性がある。そこで、GSTP1についてCOPDとのassociation studyを行ったところ、exon-5における105Ile genotypeとCOPDとの関連が示唆された。このGSTP1遺伝子多型のCOPD発症への意義を確立するためには、本来ならば、この遺伝子多型毎に喫煙負荷量をマッチさせた群を前向きに、呼吸機能などで評価追跡すべきである。しかし、病的な気流閉塞を証明するためには喫煙を続けても20年以上の経過観察が必要であり、実際的ではない。そこで、GSTP1蛋白機能のない個体を用いて喫煙負荷研究を行うため、英国で開発されたグルタチオンS-トランスフェラーゼP1/P2(GSTP1/P2)欠損マウスを移入した。マウスのGSTPは、GSTP1、GSTP2がクローニングされており、両者は2.5kb間隔でタンデムに位置している。GSTP1を欠失させ、GSTP2をtruncatedしたコンストラクトを作成し、ES細胞に遺伝子導入し、両遺伝子の発現がES細胞中に見られないことを確認し、マウスを作成した。
マウスのGSTPはGSTP1遺伝子発現がGSTP2発現量をはるかに上回るため、両者を欠失させた場合その影響は、主にGSTP1遺伝子発現がないものと考えてよい。本研究では、GSTP1/P2 null mouseに対する喫煙肺障害を検討した。その結果、慢性喫煙負荷によってGSTP1/P21 null mouseは肺気腫様の変化を生ずることが明らかとなった。したがって、ヒト個体における喫煙後の肺気腫形成のよいモデル動物と考えられ、同時にCOPD患者の病態研究に重要な情報を提供しえるものと考えられる。COPDには、慢性気管支炎、肺気腫があり、この2病型は肺組織の形態も病理も異なっている。加齢は万人に生ずるが、その結果生ずる老化というヘテロな病態に修飾されるCOPDは、遺伝的素因もさることながら、その後の病気を悪化せずに食い止める手立てがより重要であると考えられる。したがって、肺機能の悪化の早い患者群や、気管支拡張薬が奏効する患者群を選び出すような遺伝的解析が重要である。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
長瀬 隆英 | 東京大学 | 医学部附属病院 | 教授 | (Kakenデータベース) |
川口 浩 | 東京大学 | 医学部附属病院 | 助教授 | (Kakenデータベース) |
大賀 栄次郎 | 東京大学 | 医学部附属病院 | 助手 |
OHGA Fujiro | The University of Tokyo, Faculty of Medicine, Assistant |
山本 寛 | 東京大学 | 医学部附属病院 | 助手 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2003 - 2004
【配分額】3,500千円 (直接経費: 3,500千円)