他種ウイルス遺伝子導入によるヘルペスウイルスの宿主特異性の変化の研究
【研究分野】基礎獣医学・基礎畜産学
【研究キーワード】
BHV-1 / PRV / TF7-6 / Th1 / アポトーシス / UsORF8 / D8 / RK13 / semi-permissive / non-permissive / GFP / Th2 / gB / gC / HmLu-1 / IE gene / green fluorescent protein / A31細胞
【研究成果の概要】
アルファヘルペス亜科に属するウイルスの宿主特異性は種によって大きな差が見られる。その内でウシを宿主とするウシヘルペスウイルス1型(BHV-1)はin vivoにおいてもin vitroにおいても比較的狭い宿主域を示すが、ブタオーエスキー病ウイルス(PRV)は非常に広い宿主域を有する。本研究においてPRVの糖タンパクgBおよびgCの遺伝子をBHV-1のゲノムに組み込んだ組み換えウイルスBHV-1/TF7-6を構築し、この組み換えウイルスの、BHV-1に対してsemi-permissiveあるいはnon-permissiveである細胞に対しての吸着、侵入能が著しく増大している事をQCPCR法を用いてウイルスDNAを定量することによって明らかにした。更にBHV-1/TF7-6のゲノムにくらげ由来の蛍光タンパクGFP遺伝子を組み込んだBHV-1/TF7-6/GFPを構築し、マウス由来のnon-permissiveであるBalb/c/A31細胞への感染実験を行い、蛍光顕微鏡を用いてGFPタンパクの挙動を追跡した。その結果PRVのgB、gCを発現すると感染細胞内で強い蛍光がみられたがBHV-1のimmediate earlyタンパクは発現していなかった。Balb/cマウスに精製したBHV-1/TF7-6および親ウイルスを接種して免疫反応を調べた結果、誘導されたanti-BHV-1IgG2aとand-BHV-1IgG1の比は前者の方が有意に高い事が明らかになった。これはBHV-1/TF7-6が親ウイルスに比してTh1型の免疫反応を誘導しているものと考えられた。BHV-1のUsORF8タンパクは他のアルファヘルペスウイルスのUs9タンパクの相同タンパクであるが、ウサギ由来のRK13細胞に単独で発現させるとアポトーシスを誘導する事を発見した。そこでBHV-1のUsORF8を発現しない変異株(BHV-1・D8)を作出し、RK13細胞に感染させたところ、野生株に比して細胞障害を起こす程度が低く、野生株感染時に見られる顕著なアポトーシス誘導も観察されなかった。更にBHV-1/D8のRK13における増殖能は野生株に比して高かったが細胞外へ遊離されるmatureウイルス量は低下していた。以上の結果、ORF8タンパクはRK13細胞にアポトーシスを誘導することにより、ウイルス粒子を細胞外へ遊離させる機能を有するのではないかと思われた。
【研究代表者】