近代日本における「在来的経済発展」と都市「小経営」
【研究分野】経済史
【研究キーワード】
在来的経済発展 / 都市小経営 / 都市小工業 / 産業集積 / 玩具工業 / 都市型集積 / 分散型生産組織 / 東京市 / 工業組合 / 実用新案 / 新規開業 / 徒弟 / 小経営 / 都市史 / 在来的発展 / 小工業 / 労働市場 / 二重構造 / 問屋制 / 女性労働 / 都市 / 近代日本 / 雑業層 / 就業形態 / 都市下層社会 / 在来産業 / 市勢調査
【研究成果の概要】
本研究は、近代日本において総体として極めて大きな雇用吸収力を有しながら、これまで研究の進んでいなかった、都市「小経営」の実態と、その展開論理を検討することを課題としている。具体的には、20世紀前半の東京市を対象に、近代日本の都市「小経営」が固有の展開論理を有する存在であることを、実証的に明らかにすることを試み、以下の三つの実証成果を得た第一に、1910年代の東京市就業構造に関する統計データの検討を通じて、下層社会および工場労働者層とは明確に区別されるべき商工業「業主」およびその家族労働力の存在を摘出した。第二に、工業発展の実態を検討し、戦間期東京の工業発展において、「小経営」の特徴を色濃く備えた「小工業」が重要な担い手であったこと、この「小工業」の創生・再生の背後には、担い手にとっての固有のライフコースの見通しが存在していたことを示した。この成果を踏まえて、第三の作業として、戦間期東京で顕著な発展を示した玩具工業を事例を、立ち入って検討した。「小工業」は、問屋層を核とした分散型生産組織の基盤をなしていたこと、そこには広い意味での「徒弟」制によって熟練形成のプロセスが組み込まれており、それが「小経営」を不熟練労働機会一般から区別しうる要因となっていたこと、業者の地理的集積と制度的支援(実用新案制度や工業組合など)が、「小経営」に随伴する経営の不安定性を緩和する要素として働いていたことなどを明らかにした。これらの成果によって、筆者の主張してきた近代日本における在来的経済発展の論理が、明治期の農村工業だけではなく、戦間期の都市工業に関しても、適用可能性をもつことが明らかとなったと考える。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2002 - 2004
【配分額】2,400千円 (直接経費: 2,400千円)