植物ウイルスのゲノム複製装置の分子解剖と無細胞ウイルス複製系の開発に関する研究
【研究分野】植物保護
【研究キーワード】
植物ウイルス / RNA複製 / DNA複製 / 宿主タンパク質 / TMV / SbCMV / AGSV / SBWMV / 宿主因子 / CTLV / PVX
【研究成果の概要】
本研究では、無細胞ウイルス複製系の樹立を目指して、ウイルスゲノムの構造がそれぞれ互いに大きく異なる5種の植物ウイルスについて、それらのゲノム複製装置に関する分子解剖学的解析を行う。
1.TMVのゲノム複製装置の分子解剖:タバコモザイクウイルス(TMV)RNA複製酵素(RdRp)には、宿主植物のプロテインキナーゼ(NtPERK1),プロテインホスファターゼ2C(NtPP2C-2)、アルギニンデカルボキシラーゼ(ADC)およびリングフィンガータンパク質(PHF15)が、それぞれ特異的に結合して、TMV複製を制御していることが示された。さらに、翻訳伸長因子eEF1AがTMV RNAの3'非翻訳領域ならびにTMV RdRpに直接結合し、ウイルスゲノム複製複合体(VRC)の必須の構成成分であることが示された。
2.SbCMVのゲノム複製装置の分子解剖:ダイズ退緑斑紋ウイルス(SbCMV)のORF II産物は相互に自己結合しており、この結合がウイルスの病原性に必須であることが示された。
3.ASGVのゲノム複製装置の分子解剖:リンゴステムグルービングウイルス(ASGV)のウイルスタンパク質がフレームシフトにより翻訳されること、variable regionが病原性に関わることを示した。
4.TVXのゲノム複製装置の分子解剖:チューリップXウイルス(TVX)と同属のジャガイモXウイルス(PVX)の病徴決定因子がRdRpのC末端領域および5'非翻訳領域にあることを明らかにした。
5.SBWMVのゲノム複製装置の分子解剖ならびに無細胞SBWMV複製系の開発:ムギ類萎縮ウイルス(SBWMV)のRNA複製適温が17℃であり20℃以上では複製しないことを示した。また、SBWMVの2種類の複製酵素タンパク質p152とp211がシスに発現することで活性の高い複製酵素複合体が形成される可能性を示すとともに、p152/p211内の未同定サイレンシング抑制領域が感染初期のRNA複製を成立させ、感染後期の隣接細胞への移行にはP19がサイレンシング抑制因子として機能している可能性が示唆された。一方、コムギ胚芽抽出液の転写共役的翻訳系によってSBWMV RNA1のcDNAがin vitroで転写・翻訳され、P152遺伝子の終止コドンはin vivoと同様に読み過ごされp211産物を生じることが示された。
【研究代表者】
【研究分担者】 |
難波 成任 | 東京大学 | 大学院・農学生命科学研究科 | 教授 | (Kakenデータベース) |
白子 幸男 | 東京大学 | アジア生物資源環境研究センター | 教授 | (Kakenデータベース) |
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【研究種目】基盤研究(S)
【研究期間】2001 - 2005
【配分額】128,050千円 (直接経費: 98,500千円、間接経費: 29,550千円)