核はなぜ分解されないのか?-糸状菌に学ぶヌクレオファジーの分子機構-
【研究キーワード】
オートファジー / 核 / ヒストンH2B-EGFP / Ypt7 / Atg15 / オートファゴソーム / 液胞 / Atg8-interacting motif / 麹菌 / 分化
【研究成果の概要】
核がオートファゴソームに取り囲まれた状態、および液胞に輸送された状態を可視化するため、オートファゴソーム膜と液胞膜の融合に関わる出芽酵母YPT7の麹菌オルソログAoypt7、および液胞内においてオートファゴソーム膜の分解に関わる出芽酵母ATG15のオルソログAoatg15をそれぞれ破壊した株を作製した。YPT7はRab様低分子量GTPaseを、ATG15は液胞リパーゼをコードする。両破壊株とも、麹菌オートファジー欠損株に見られる、気中菌糸および分生子の形成が著しく低下すると言う表現型を示した。これらを用いて実際にヌクレオファジーが欠損しているかを調べるため、ヒストンH2B-EGFP融合タンパク質を発現させ、その分解をプロセシングアッセイにより調べた。本アッセイでは、核が分解されなければヒストンH2B-EGFPのバンドが、核が分解されれば液胞プロテアーゼに耐性を持つEGFPのバンドが、それぞれウエスタンブロットで検出される。実験の結果、Aoypt7破壊株では予想通り窒素源および炭素源飢餓時のヒストンH2B-EGFPの分解は抑制された。一方、Aoatg15破壊株ではヒストンH2B-EGFPの分解はわずかしか低下しなかった。このことから、麹菌ではAoAtg15以外の液胞リパーゼがオートファゴソーム膜の分解に関わることが示唆された。現在、両遺伝子破壊株におけるヒストンH2B-EGFP蛍光の観察を行っている。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2020-04-01 - 2023-03-31
【配分額】4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)