実験的手法によるスギ高齢木の環境適応機構の解析
【研究分野】林学
【研究キーワード】
スギ / 加齢 / 水ストレス / 細胞弾性率 / P-V曲線 / 光合成 / 気孔制限 / カルボキシル化効率 / 高齢木 / P-V曲線法 / 接ぎ木 / 水ポテンシャル / 膨圧 / 細胞外水量 / 体積細胞弾性係数 / スギ高齢木 / 水分特性
【研究成果の概要】
樹木は加齢に伴って樹高が高くなり、葉の着生高も上昇する。葉の着生高が高くなることは光の獲得では有利であるが、水をより高い位置まで引き上げることになるため、水ストレスが光合成の制限要因となることが指摘されている。本研究では、接ぎ木等の実験的な手法を用いて、葉の着生高が高くなることによる光合成速度の低下を実証するとともに、水ストレスによる光合成の低下を緩和するような適応的な反応をスギの葉が示すことを明らかにした。まず、高木の針葉を苗木に接ぎ木し、着生高を低くすることによる光合成機能の変化を調べた。その結果、高木の針葉では、気孔コンダクタンスの低下による二酸化炭素の取り込みの制限と、光合成の炭酸固定酵素の活性低下によって光合成速度の低下が起きていることが実証された。ついで、P-V曲線法によって得られる含水率と水ポテンシャルの関係と自然状態での含水率と水ポテンシャルの関係の日変化を比較したところ、P-V曲線に比べて含水率が低下しても水ポテンシャルが高く維持されていることが明らかになった。この傾向は、高木の方が顕著であった。スギの高木と苗木の針葉の水分特性の日変化を比較したところ、水ポテンシャルが低下する日中には、乾重あたりの浸透調節物質量が増加し、細胞壁の含水率の低下に伴って弾性が低下することが明らかになった。この反応は、葉の浸透ポテンシャルを低下させるとともに、含水率の低下に伴う水ポテンシャルの低下を緩和するものであり、先に確認されたP-V曲線に比べて含水率の低下に対する水ポテンシャルの低下が緩和される現象の存在を支持するものである。このような適応的な反応は、苗木よりも高木で顕著なことが明らかになった。針葉の水分特性が水ストレスに対して適応的反応をしめすことが、スギが高齢になっても光合成生産を維持し、50mを超すほど樹高が高くなれる要因の一つと考えられた。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】1999 - 2000
【配分額】3,900千円 (直接経費: 3,900千円)