in vivoタイムラプス観察で解明する細胞間相互作用による神経回路発達機構
【研究キーワード】
樹状突起 / 発達 / 小脳 / 分子機構 / 神経
【研究成果の概要】
小脳プルキンエ細胞は、哺乳類神経系における樹状突起発達の優れたモデル細胞である。プルキンエ細胞の樹状突起は何百もの樹状突起が小脳皮質の3次元空間において互いに重ならず一平面状に配置される。このような、発達中の樹状突起が空間内に重複を避けて成長する機構は種を超えてあらゆる神経細胞でみられる普遍的な現象であり、樹状突起の「タイリング」あるいは「sel-avoidance(SA)」と呼ばれ、樹状突起同士が細胞表面接着因子を介したがいに反発しあうという機構によって制御されると考えられている。例えば先行研究においても、細胞表面に局在する膜タンパク質であるPcdh-alpha/gamma、およびROBO2が、プルキンエ細胞のSAを制御することが報告されている。しかし、多数の細胞が高密度に存在する脳において、樹状突起の規則正しい配置が、どのように個々の細胞接着因子によって制御されるのかはよくわかっていない。この問題を解決するため申請者は、新たにRPTPmという分子に着目した。RPTPmはトランスホモ結合によって細胞間接着を担うことが示唆されており、小脳プルキンエ細胞樹状突起に豊富に発現する。当該年度において申請者は、RPTPmがマウス小脳プルキンエ細胞樹状突起の樹状突起配置および平面形成に必要であることを明らかにした。また、RPTPmはPcdh-gammaとは異なるシグナル経路を介して樹状突起形態を制御する一方、面白いことに、ROBO2によるシグナル経路と干渉しあうことが示唆された。本研究成果は、多様な細胞接着因子がどのように複雑な細胞形態形成を制御するかという、普遍的な問いに答えるための手掛かりになると考えられ、引き続き次年度の研究成果が期待される。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(C)
【研究期間】2021-04-01 - 2024-03-31
【配分額】4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)