肝細胞-伊東細胞混合培養系を基盤とする有極性化学プラント型人工肝臓の開発
【研究分野】医用生体工学・生体材料学
【研究キーワード】
人工肝 / 肝細胞 / 伊東細胞 / 幹細胞 / マトリックス / アポトーシス / 細胞移植 / マイクロファブリケーション / マイクロファブレケーション / アルブミン / ステムセル
【研究成果の概要】
現在移植以外に方法のない非代償性肝硬変症に対する再生医療への期待はますます大きくなっている。現在のところ人工肝臓の開発はブタ肝細胞を利用したプロトタイプが開発されてきているがいずれも大型で肝細胞の生存時間にも問題があった。我々は小型でかつ肝細胞の生存時間の長い在宅型の人工肝臓を開発するため、コンピューターの半導体の基盤製作に利用されている、マイクロファブリケーション法(微細加工技術)を応用した。このテクノロジーはあらゆる電化製品の小型化・軽量化に大変寄与した画期的な方法である。この方法により肝細胞と非実質細胞を混合培養することがより効率的に行うことが可能となった。さらに通電法により細胞をシート状にしてこれを3次元的に積み重ねる方法を取り入れることによりより効率的に立体的構築を築くことが可能となった。本研究ではこれらの成果をもとにして組織幹細胞を肝細胞に誘導分化しより現実的なヒトの体内に埋め込むことが可能な人工肝臓の原型となる実験装置を開発した。具体的には組織幹細胞を実際に扱い実績のある共同研究者の協力を得て肝臓よりいわゆるside population(SP)細胞を得る。さらにこれを用いて幹細胞の特徴である「多分化能」と「自己複製能」を分子生物学的に研究するとともに、肝臓という臓器の組織形成、再生過程を再現することにより、再生医療への応用の可能性を実現した。さらに、組織幹細胞(SP細胞)の自己複製機構をシグナル伝達、細胞周期の観点から解明しその知見を再生医療展開のための基盤研究に結びつけるためSP細胞を単離、増殖する方法を検討した。肝臓にはおよそ0.6%のSP細胞が存在し形態的には骨髄のSP細胞とほぼ同じであることが確認された。次にそれらに発現し必須な遺伝子群を同定し、それを利用して肝臓前駆細胞の増殖・分化をコントロールした。一方、接着基質上での培養肝細胞応答の検討も行い、アシアロ糖タンパク質をモデル化した人工基質PVLAのコーティングでは、培養肝細胞の接着形態が変化し、増殖能と分化能も相反的に変化した。また、増殖能と多分化能のある細胞として株化したマウス骨髄幹細胞をレトロウイルスベクターでGFP標識し、C3Hマウスに部分肝切除を施した後に、脾臓あるいは下大静脈に注入したところ、GFP陽性細胞の肝内への集積を確認できた。これにより、豊富に存在する自己骨髄細胞の応用で人工肝に必要な莫大な細胞ソースを確保できる可能性が開けた。
【研究代表者】