恒常性破綻から形態再生に至る組織再生プロセスの統合的理解を目指して
【研究キーワード】
組織再生 / 幹細胞 / ゼブラフィッシュ / トランスジェニック / ヒレ
【研究成果の概要】
生物は、多細胞体制を長期に維持・再生する能力を持つ。近年,再生過程における様々のシグナルや分子の関与や,再生における細胞の振る舞い,細胞系譜についても解明が進んできたが,依然として,再生プロセスの重要なステップに関して解明が進んでいない。本研究はゼブラフィッシュのヒレをモデルとして,①再生応答をトリガーする傷シグナルの性質と実体,②組織の主要な基盤となる間葉細胞の由来,多様性,分化多能性,恒常性維持における役割,③位置情報の正体や形態再生のメカニズム,の3つの点について研究を行い,これら重要かつ未解明のプロセスの間のリンクを解明することによって,再生過程の統合的な理解を飛躍的に進めることを目標とする。本年度の研究では,以下の進捗があった。
①再生応答のトリガー: 再生応答遺伝子の周辺配列から,高度に保存された配列を同定した。EGFPレポータートランスジェニックを用いたアッセイにより,傷害に応答してEGFPの転写を活性化するエンハンサーエレメントの解析と特定を進めた。
②間葉細胞の由来,多様性,分化多能性,恒常性維持における役割: 組織の大部分を占める間葉細胞の実体については余り理解されていない。本研究では,間葉細胞を発生,成長期から追跡するために,sox9:Creリコンビナーゼトランスジェニックを作製し,間葉細胞系譜の解析を進めている。
③位置情報の正体と形態再生のメカニズム: 私達は,以前の研究で,ゼブラフィッシュの鰭条の長い部域と短い部域を司令する位置情報が存在することを示した。本研究で,位置情報の性質の解析をさらに進め,この位置情報は,繰り返し再生しても保持されること,切断位置の間葉細胞によって決まることを示した。さらに,RNAプロファイリングにより,ヒレの中央部(短い部分)と両端(長い部分)で差次的に発現する遺伝子を探索し,候補となる遺伝子を特定した。
【研究代表者】
【研究種目】基盤研究(B)
【研究期間】2019-04-01 - 2024-03-31
【配分額】17,290千円 (直接経費: 13,300千円、間接経費: 3,990千円)