水泳水中運動における新たな流体力学的解析法の開発とメカニズムの解明
【研究キーワード】
水泳 / 流体力学 / バイオメカニクス / 流れの可視化 / コンピューターシミュレーション / コンピュータシミュレーション
【研究成果の概要】
本年度は、フロントクロールを最大努力で泳ぐ際の手の運動学的指標、手の流体圧分布、手の推進力の関係について検討した。
本研究には24名の男子水泳選手が参加し、競技レベルは地域大会から全国大会の決勝までであった。試技は、無呼吸と最大努力で20mのフロントクロールを3回泳ぎ、そのうちの1回を解析用に選択した。手の流体力学的圧力分布を測定するために、各手に6個の小型圧力センサーを取り付け、手の実際の座標を得るために15個のモーションキャプチャカメラを水中に設置した。
分析の結果,平均泳速度は、手の速度(r = 0.881)、推進力(r = 0.751)、圧力力(r = 0.687)と正相関があった。手背の圧力は、手の速度(r = -0.720)、推進力(r = -0.656)、平均泳速度(r = -0.676)と非常に高い負の相関が見られた。逆に、手のひら圧は、手の速度、平均泳速度とは相関がなかった。しかし、推進力(r = 0.512)、手掌圧力(r = 0.736)、迎え角(r = 0.471)には正の相関が見られた。手掌と手背の平均圧力の絶対値を比較すると、手背の平均圧力が有意に高く、効果量も大きかった(d = 3.71)。
以上の結果から,泳速度が速いスイマーほど、手の速度は速く、手の推進力も大きかった。手背の圧力は、泳速度、手の速さ、手の推進力と有意な負の相関があった。一方、手のひらの圧力は、水泳速度および手の速度と有意な相関はなかったが、手の推進力および迎え角と有意な相関があった。また、掌圧と背圧の値を絶対値で比較すると、背圧は掌圧の2倍以上あり、手に作用する力に大きく影響することが示唆された。したがって、泳ぐスピードが速いスイマーは、手のスピードが速いために手背圧の減少が大きく、より大きな手推進力を発揮していると推察される。
【研究代表者】