ベトナムにおける南北デルタ農村の人口移動に関する社会学的考察
【研究分野】社会学
【研究キーワード】
ドイモイ / 農村間移動 / 人口(労働力)移動 / 農業開拓 / 出稼ぎ(循環型移動) / 農村・都市間移動 / 都市化 / 社会的ネットワーク / 人口(労働)移動 / 出稼ぎ / デルタ農村 / 雇用労働 / 移住・移動 / ベトナム・デルタ農村 / 移動・移住 / 開拓 / 自由労働移動 / 計画・集団移住
【研究成果の概要】
本研究の目的は、ドイモイ以降のベトナム農村の変容を人口移動の側面から考察することであった。すなわち、統制経済時代において農村からの自由な移動が大幅に規制されていたデルタの農民たちは、市場経済化が進むにつれ、自発的に都市や他の労働市場を目指して移動を開始したのである。従来の農民の移動は、国家による組織的なフロンティアへの開拓移住に限定されていた。本研究においては、南北デルタ農民の移動を国家による組織的移動(農村間)と、農民の自発的意思による自発的移動(主に農村-都市間)の両面から捉えることを狙いとした。
本研究の方法論は、フィールドワークによる現地調査および地方文書・データの収集である。したがって全てのメンバーはそれぞれの調査村をもち、フィールドワークに臨んだ。共通の問題意識は、出身村(移住元)と移住先(都市・農村)の双方向からのアプローチであった。主に岩井・大野・大田は当該研究期間をメコンデルタの開拓村への南北農民の組織的移動に関する調査に当てた。一方、残りの研究分担者である桜井・高田はともに紅河デルタ農村における労働力移動(自発的・組織的)の歴史的変遷に焦点を当てて調査し、分析した。その他、研究協力者は主にドイモイ以降の紅河デルタ農村からの自発的移動(主に都市部への労働力移動)に焦点を当て、現地調査を行った。
以上の調査で明らかになったことは、ドイモイ以降のベトナムの人口移動は極めて多様な形態を示しているということである。その背景には、植民地時代の労働徴用を経て、ベトナム政府が60年代から実施してきた国内開拓移住政策が農村間の人口移動を保証してきたということが挙げられる。また、他の東南アジア諸国に見られるような主要都市への労働力流出が起きている一方で、単身者の場合には出身村への回帰志向が根強く、家族ぐるみの挙家移住とは大きく異なることも明らかになった。さらに、90年代以降の農村工業化の進展の中で地方の農村や中核都市の雇用吸収力が有効に働いているということも労働力移動に新たな流れを加えている。
【研究代表者】