分権時代の都市的自治体における政権運営とまちづくり政策法務の交錯
【研究分野】都市
【研究キーワード】
政策法務 / まちづくり / 分権時代 / 政権運営 / 地方議会 / 政策運営
【研究成果の概要】
本研究は実務家の運動論が中心である政策法務論と政治過程・構造の実証研究を中心とする政治学・行政学とを横断して結合させ、都市的自治体のまちづくりの展開を総合的統一的に把握することを目指したものである。
第一の成果は従来、文書化されていなかった自治体行政における法務管理を多くの自治体の当事者に同一の方法によりインタビューすることで比較研究可能な資料として作成したことである。第一次地方分権改革以降、各地で独自条例制定によるまちづくりの動きなどが見られるが、条例制定に至るプロセスはそれぞれの自治体でどのようになっているのか。規模も、歴史も異なる自治体の比較では、自治体の法務環境は黎明期のカオスにあることが窺えた。
第二の成果は自治体のトップ層の政策的な志向がどのように施策となっていくのかの解明である。神奈川県の長洲知事時代を支えた幹部職員へのインタビューにより、情報公開制度の創設等、具体的な施策の形成が明らかになったが、これは従来の担当職員による参与観察とは一線を画す成果である。
第三の成果は議会議員へのインタビューによる自治体政治からのアプローチである。この時期までに行われていた市町村合併や議会運営、法務管理についての実態=常識とは、かなり異なる=を議員インタビューにより明らかにした。
総じて自治体では議員・職員といった個人アクターの果たす役割が非常に大きく、また、公的な自治体間関係や組織よりもインフォーマルな個人同士のネットワークの方が有効に機能していることも確認された。財政的困難度を高める今後の自治体運営においては、政治的意志決定がますます重要となる。本研究によりビビットに記録した21世紀初頭の自治体の政権運営と政策法務の交錯部分は、これからの第二期地方分権改革の方向線を示すものであり、さらに多くの自治体問の時系列的な調査が求められよう。
【研究代表者】