18世紀後半以降のイギリスにおけるイングリッシュネス概念の生成に関する文化研究
【研究分野】ヨーロッパ語系文学
【研究キーワード】
イングリッシュネス / ブリティッシュネス / 帝国主義 / 小英国主義 / コスモポリタニズム / 都市と田舎 / 土地に還れ / ポストコロニアル / 都市化 / 都市 / 田園 / グローバリゼーション
【研究成果の概要】
本研究の目的は、後期ヴィクトリア朝からエドワード朝あたりにかけて成立した、田園主義的価値観を基盤としたイングリッシュネスという概念が、どのような歴史的コンテクストのなかで、どのような他の概念(ブリティッシュネス、コスモポリタニズムのような)との関連のなかで生じてきたか、を追跡することをとおして、イングリッシュネス概念の特質を明らかにしようとすることであった。
4年間の研究をとおして確認しえたことは、この時代のイングリッシュネス概念というのは、18世紀後半以降の産業革命とそれに起因する都市化の拡大という現象と、大英帝国の帝国主義的拡大とそれによる民族と文化の多様化という現象とが契機となって形成された反動的メンタリティであり、それぞれ都市化の反動としての田園への回帰(「土地へ還れ」)と、大英帝国の拡大の反動としての「小英国主義」という傾向を帯びつつ、文化的に構築された概念だったということである。
そしてそれはまた、グレート・ブリテン・アンド・アイルランド連合王国成立以後、ヴィクトリア朝のなかで進んでいた国民国家的ナショナリズムの展開(「想像の共同体」という問題)と深く関わった政治的に構築された概念でもある。その意味でそれは、OEDやDNBといった大きな辞典・事典の編纂・英文学のカノンおよび英文学の研究方法の成立、国家的英雄の銅像の建立といった現象とも関わる問題だった。
そのようなものとして、この主題は18世紀後半以降の政治的・経済的・社会的・文化的な多様な動向と関連させて研究しなければならないものであり、それがまさにわれわれが文学と歴史の学際的研究をめざしたゆえんである。
【研究代表者】