超高分解能光散乱法による非平衡系ダイナミクスの研究
【研究分野】応用物理学一般
【研究キーワード】
光散乱法 / 非平衡 / 温度勾配 / フォノン / フォノン伝搬 / 光ビ-ト分光法
【研究成果の概要】
非平衡過程の統計物理は近年における極めて興味深い研究対象であり、流体の臨界挙動やガラス転移、多成分系の相分離過程など様々な系の記述に成功しているが、理論的にも実験的にも解決すべき問題は多く残されている。これら非平衡状態は、系が平衡状態へと緩和してゆくエントロピー増大の過程であり、熱流・運動量流あるいは物質流の存在によって特徴づけられる。非平衡状態を研究するためにはこれらの特徴的な輸送現象を直接に観察する必要がある。このためには超音波測定や誘電測定など外的な刺激に対する応答を調べる通常の観察は有効ではなく、熱的に励起された物質中の運動モード(ゆらぎ)を観察する必要がある。
本研究は非平衡下における物質内の様々な運動モードを超高分解能ブリュアン・レイリー散乱法で測定し、エネルギーや運動量の輸送が相互に結合することによって生じるであろう特徴的な動的構造因子を実験的に検証することである。本年度は、温度勾配を印可できる光散乱セルを試作し、熱流とのカプリングにより生ずる非対称なブリュアンスペクトルの観察に成功した。この結果、これまで一般に認められてきた非平衡系における実験の結果に重大な疑義を呈することとなった。さらに波動論にもとづいた理論を構築し、非対称を記述するパラメータの大きさを物性定数をもちいて定量的に説明した。
【研究代表者】
【研究種目】奨励研究(A)
【研究期間】1995
【配分額】1,100千円 (直接経費: 1,100千円)