スピングラスを用いた磁気記憶素子開発への基礎研究
【研究分野】応用物性・結晶工学
【研究キーワード】
スピングラス / 磁気相転移 / 磁気異方性 / 磁気記憶
【研究成果の概要】
スピングラス秩序の安定性の向上および磁気秩序の制御に関して以下の研究結果を得た。
1.スピングラスNi_<71.5>Mn_<28.5>(300Å)およびスピングラスNi_<71.5>Mn_<28.5>(300Å)//Ag(300Å)/Ni(100Å)薄膜を作成し、磁化の温度依存性および時間依存性を調べ、強磁性層のスピングラス層に及ぼす影響を検討した。零磁場冷却と磁場中冷却後に測定したNiMn/Ag/Ni薄膜の磁化の温度依存性は、NiMn薄膜と比較して高温まで差を生じた。熱残留磁化M_rの時間依存性測定の結果をM_r=M_0‐S log tの関数により解析した。二つの試料において、スピングラスの緩和率を表すSは、ほぼ等しい温度で0になったが、NiMn/Ag/Ni薄膜の残留磁化M_0はNiMn薄膜に比べて高温まで有限に維持されることが分かった。この結果は、スピングラス状態が強磁性層を近付けることにより高温まで安定に維持されることを示唆する。
2.現有のSQUID磁力計に石英ファイバをにより光(He‐Ne633nm)を導入し、スピングラス半導体Cd_<1‐x>Mn_xTeの光励起に伴う磁化の変化を測定した。その結果、等温残留磁化が光照射とともに減少した。この現象は熱残留磁化においても観測されたが、等温残留磁化と熱残留磁化とでは照射光強度依存性に違いが見られた。
以上の結果から、強磁性体との多層化によりスピングラス秩序の安定性が向上することが分かった。また、スピングラス半導体において光励起による磁気秩序制御の可能性が見いだされた。
3.現在、今回購入した温度可変インサートを現有のSQUID素子と組み合わせ、より詳細な実験のための温度可変交流SQUID磁化率測定系を作成中である。
【研究代表者】
【研究種目】一般研究(C)
【研究期間】1993
【配分額】2,000千円 (直接経費: 2,000千円)